翌日、早乙女君はまたボコボコにされていた。
「乱ちゃん、どないしたん?」
「反転宝珠の効果で早乙女君を嫌いになったシャンプーに意地でも好きだと言わせたいんだってさ。早乙女君、すごーく自分に自信を持っているから、それが許せないんじゃないかな?」
お好み焼きを焼いてくれた右京さんにお礼を言いつつ、割り箸を貰って一口サイズに切り分け、九能先輩と一緒に分け合って食べる。
うん?ソースを変えたのかな。
「どや?ウチの特製ソースやで」
「生臭いぞ」
「此方は塩辛いかな」
「なんでやの!?」
ショックを受ける右京さんはソースをスプーンで掬い、パクリと食べた瞬間、ピシッと石のように固まってしまった。いや、実際に固まっているかな。
しかし、本当に悩ましい味かな。塩辛い味が、今度は甘酸っぱいものに変わっている。けど、これはこれで味の変身お好み焼きと思えば美味しい。
「ムッ。今度はハチミツの味がするぞ」
「いややー!聞きたないッ、ウチのタレがまた失敗してたやねんてあり得へん!」
「そうかな。私は好きだよ?」
「ほんま!?ほんたにそう思っとるんか、切ちゃん!ウソ言ったら恥ずかしい格好で接客してもらうで!」
「なにっ!?恥ずかしい格好だと!!!」
九能先輩、なんで興奮するのかな?と小首を傾げつつ、鉄板で熱しているお好み焼きにソースを追い足して貰い、また食べるも美味しいものは美味しい。
「……そう言えば昔から切君は何でも美味しいと食べていたが、まさか味覚音痴なのか?」
「アホ言うな、九能。味覚音痴やったら、あないに美味しいお弁当作れへんやろ。結論ゆーたら、切ちゃんはホンマに何でも美味しく食べれるわけや」
二人は興味深そうに見るけど。
私の舌は普通だよ。
確かに、お母さんの作ってくれた料理は独特だったような気もするけど。よくよく考えたら、アレって並行世界や異世界の料理だったのかな。
そう思うと何だか怖く感じる。
あとで、お父さんに連絡しようかな。
そんなことを思っていたその時、早乙女君がお好み焼き屋「うっちゃん」の戸を開け、ヘトヘトになりながらも席に座り、右京さんに出されたお冷やをゴクゴクと一気に氷まで噛み砕いて飲み干す。
「た、助かったぜ、うっちゃん」
「ええよ、ウチと乱ちゃんの仲やもん」
嬉しそうに笑う右京さんの笑顔は可愛く、早乙女君も顔を赤らめるも直ぐに「うっちゃん、オレが勝つために協力してくれ!」と頼み込み始める。
「よう分からんけど。ええよ、乱ちゃん!」
「あかね君、不憫な」
うん、あかねさんにも頼れば良いのにね。