まあ、結果だけを語るとしたら。
早乙女君は勝負に勝って、あかねさんに負けた。ムースも道具に頼らず、自分の力でシャンプーを振り向かせることを選んだ結果とも言えるけど。
「ねえ、お婆ちゃん。これって男にも効果あるの?」
「なびき殿、何を言っておるのじゃ?」
反転宝珠のブローチを手に取った天道先輩は徐に句君に「悪意」の方に向けたブローチを着けた。まさか、ここで句君に自分の事を手酷くフラせるつもり?
そう思っていた次の瞬間、ブローチが砕けた。
「「「「は?」」」」
「なんと…!」
「お婆ちゃん、どういうことね!?」
「どうもこうもあの男の好意は反転宝珠を使っても覆せぬほど強大ということじゃ。全く糸色殿の血筋は本当に可笑しいものばかりじゃわい」
「オレの愛が高々オモチャで変わるわけないだろう。ここまでやったんだし、そろそろ信じてくれるか?」
「……はあ、分かったわ。私の負け、句君の勝ちよ。ただし、一度でも私を裏切ったら即離婚するからね」
「は?浮気しないが?」
これは、大団円で良いのかな?
そうラーメンを啜っている九能先輩を見ると「天道なびき、ようやく句の愛を認めたか。まあ、今後はかなり苦労すると思うが」と意味深げに呟いた声に何人かが此方を見てきた。
そして、私の方を向いた。
なんとなく、彼の言葉の意味を理解した。
糸色家の男児は、愛にどろどろしている。
捕まえれば絶対に離さない。自由気ままに世界を渡り歩いているお母さんもお父さんのところに帰ってくるのは愛に飢えてしまうからなのかも知れません。
もっとも、単なる憶測に過ぎないけど。
「天道先輩」
「あら、なにかしら。切ちゃん」
「頑張って下さいね」
「……薄々分かっていたけど。糸色家の血筋って、そういうところあるのね。まあ、年上として主導権は握るつもりだから安心して良いわよ」
ヒラヒラと手を動かす天道先輩。
その姿はどこか緊張しているようにも見えたものの、天道先輩なら大丈夫だろうと信じつつ、九能先輩にメンマをあげると「ムッ。ゴリゴリ感がすごいな」と驚く。
やっぱり、そうだよね。
すごく美味しいから、もっと食べてほしいかな。というより此処に来るとなんで鰻や上海蟹を注文するのかいい加減に教えてほしい。
「何だか私達だけ暇ね」
「シャンプーもこっちでお喋りする?」
「するね!」
「グワッ」
「ムースも来たいなら来るよろし」
「グワッ」
やっぱり、ふたりは仲良しなのかな?と小首を傾げながら四人でまた会話を再開する。