本条鎌一の足元で緩やかに動く鎖分銅の不規則且つ変幻自在の軌道を完全に把握することは不可能だ。私の蛇轍槍は不規則に見えるけど、鎖ほど変幻自在に軌道を変えるわけじゃない。
「本条流乱弁天」
グルグルと乱回転を始める鎖分銅の動きに警戒していた刹那、二股状の石突きが目の前に現れ、咄嗟に槍の柄を盾に受け止める。が、後ろに吹き飛ばされ、素足のまま地面を踏み締め、大鎌の一撃を受け流す。
しかし、私の脇腹に強烈な衝撃と痛みが走った。
「鎌の柄に気を遣りすぎ。最初の乱弁天のパフォーマンスに意識を向け、二度目は柄、トドメは鎖分銅。大鎖鎌という武器のポテンシャルは変幻自在にある」
「ゲホッ……お喋りすぎるかな」
ゆっくりと呼吸を整えて、痛みを和らげる。
「本条鎌一、二人が来る前に聞きたいんだけど。どうして、わざと嫌われる言葉を使うの?」
「何の事か分からないな」
「そういうところかな。お父さんにそっくり」
クスクスと笑いながら、くるりと槍の穂先を後ろに構え、石突きを穂先のように構える。私は人を殺したり殺されそうになるのはイヤだ。
だから、本気で倒すために使う。
「八寸」
「音速の突き。
「使えるよ。だって、私は強いもの」
「糸色流」地形効果・五十本の槍────。
身体中に仕込んでいた槍を同時に展開し、屋上の至るところに突き刺す。僅かに視線の逸れた刹那、宿地と舞神法、飛天御剣流の神速の足捌きを最大走力で発動する。
もう、貴方に追えるのは私の残像だけ。
「加法・十本!」
「後ろか!」
大鎌の振るわれる瞬間、千鳥十文字槍を大鎌の逆輪に叩きつけるように地面に突き刺し、本条鎌一の動く先々に槍を突き立て、槍の柄を檻のように見立てて、彼の身動きを完全に封じ込める。
「残り四十本、どうする」
「句の体術の師は私だ」
そう言って本条鎌一は右腕を無造作に振り上げると地面に突き刺した槍を悉く吹き飛ばした。……やっぱり、男の人って負けず嫌いかな。
「今度は此方が聞こう。どうする」
「あはは、貴方もそういうことするんだね」
ちょーっと、ムカつく!
「覇極流超奥義」
「……ようやく本気になったか」
ぐるりと槍の一本を背中に隠すように大きく振りかぶり、一気に放り投げる。真っ直ぐ飛来する槍を巧みに往なし、受け流す本条鎌一。
しかし、この技の本領は此処じゃない。
私の足の速さと四十本の槍、この二つを重ねることで無尽蔵に思える投げ槍を使える。まあ、実際の奥義なんてものはないし。
本当の名前は、
逆から読むと、まぬけやろう。
意識を槍に集中させた瞬間、そこに!
「二重の極みッ!!!」
槍を投げると同時に飛び出し、二重の極みを本条鎌一の顔に向かって撃つ。やっぱり、最後まで、この人は本気で刃を向けて来なかった。
口では怒っているのに、ズルい大人だ。