私と本条鎌一の戦いが終わり、暫くして階段を上がってきた二人は地面に倒れ伏す自分達の父親の姿に驚愕し、僅かに怒りの感情を受ける。
彼を傷付けたのは事実。甘んじて受け入れるし、仕えるのを止めたいというのなら止めない。止める権利を私は、持っていない。
「ざまあないな。親父」
「……フッ。笑いたければ笑え」
「笑うわけないでしょうが、お馬鹿!」
小鎌さんの怒号にビクリと槍を集めていた身体が飛び跳ね、後ろに振り返ると地面に倒れ伏す本条鎌一の事を掴み、ブンブンと揺さぶっていた。
二重の極みを受けたダメージが、増えるんじゃないかと不安になりながらも五十本の槍を回収し、穂先の汚れを掃除し、綺麗に束ねて、十文字槍や片鎌槍など穂先の分かれたモノは仕掛けを解き、鞘に納める。
「もう好きにしろ。私は糸逢家の娘に負けた。お前達の役目も降りたければ降りて構わない。自分達の好いた男女と添い遂げろ」
「親父、全然弱ってない癖に弱ったふりするなよ。切ちゃんが本気で親父を突き刺すわけねえし。況してや短刀なんか持ってねえよ」
「……バレたか」
「人殺し扱いは遺憾かな」
槍を身体の中に仕舞い、普通に身体のダメージを分散した本条鎌一の事を見つめる。お父さんの付き人として過ごしていた分、相当の修羅場を潜っている。
本当に大人はズルいね。
「本条鎌一、私は貴方のやろうとした事を理解することは出来ないかな。子供のためを思うなら、自分も一緒に考えてあげるべきだよ」
「……トシみたいなこと言うな」
「まあ、お母さん似だからね!」
フンスと胸を張ると「そっちもトシに似ているな」と本条鎌一が呟いた瞬間、小鎌さんのパンチが彼の頭にめり込み、また地面に倒した。
そっちって、どっちだろう?と小首を傾げながら今度こそ完全に気を失った本条鎌一を句君が抱き上げ、私と小鎌さんは二人だけで屋上に残っている。
「切さん、私は貴女に仕えると決めた。その誓いを違えることは絶対に有り得ない。────けれど。次に戦うときは私か句を代わりに出しなさい」
「それは私を守るため?」
「えぇ、そうよ」
「そっか。じゃあ、お願いするかな」
私の事を真剣に見つめる眼差しに頷いて、私は手の力を抜いていく。出来ることなら誰かが傷付く前に終わらせてしまいたいけど。
小鎌さんや句君は私に傷付いて欲しくない。それだけに意識を高めている。ただ、ひたすらに私の事を守るために二人は一緒にいる。
友達として、付き人として、私を思ってくれる。
すごーく、嬉しいかな。