新学期と麝香王朝 序
「校長先生、今日も話長かったわね」
「そうだね」
小鎌さんと句君は各々の下校相手と帰る中、私はあかねさんと一緒に帰っている。九能先輩はこっそりと部屋を借りようとした事を校長先生に気付かれ、どうして一人暮らしを始める気になだったのかを問われていた。
まあ、私と暮らすためだなんて言えるわけもなく、未だに沈黙しているかな?と考えていたとき、コンクリートブロックの壁を粉砕し、どこかライム君に似た青年の登場にビックリしてしまった。
「女、女だ、ごくりんこ…!」
「な、なに?」
「お爺ちゃんに似たものを感じるかな」
そう思いながら、あかねさんと一緒ににじり寄ってきた青年の何だか厭らしい手付きを避けるように後退った次の瞬間、私達を守るように番傘が開く。
「貴様、あかねさんと糸色さんに何をする気だ」
「男は関係無い。退け!23年ぶりに会えた女の子とオレは喋りたいだけなんだあぁ!!」
「二人とも下がっていてくれ!」
ブワッと号泣したまま響君に襲い掛かる青年の剛腕を受け、響君の身体は真後ろに吹き飛ばされ、電柱をへし折って倒れ、唖然としたあかねさんに触ろうとする男の手首を蹴り上げ、睨み付ける。
「妄りに女の子に触るのは如何なものかと思うかな」
「! お、おおお…!」
「な、なに?」
あかねさんから私に標的が変わったのは助かるけど。なんで、そんなにジロジロと見つめるのか戸惑っていたとき、ふと彼の視線が動いていない事に気付く。
────彼は、私の胸を見つめている。
ゾワリと嫌な気持ちになりながら胸を守るように抱き締め、あかねさんと一緒に後ろに下がる私達の事を更に後ろへと追いやり、響君の剛腕が青年の顔面にめり込むほど見事にクリーンヒットした。
しかし、彼は平然と佇んでいる。
「オレに打撃技は効かない」
「響君、関節を殴って!」
「おう!!」
私の言葉を瞬時に理解した響君は気功法によって関節を外す仙術「解・穿功撃」を放ち、青年の右肩の関節を脱臼させ、驚く最中にパンチを関節に打っていく。
「打撃は無意味と傲ったな。オレの拳は筋肉頼りの強さじゃ防げねえよ。あかねさん、糸色さん、今の内に行きましょう。お家まで護衛します」
「ありがとう、良牙君」
「ありがとう、響君」
「はいっ!」
爽やかに笑顔を作った響君の身体は地面にめり込み、ピクリとも動かなくなった。……この男、筋肉の力だけで関節を嵌め直した?
普通に考えたら、痛いだけの事だけど。
確かに、手足が使えないなら当然だろうけどさ。