喧嘩を繰り広げるムースと響君の二人を説得し、私達は宝来山に向かっていく。ただ、この山は狂暴なおサルさんが住み処にしているらしい。
出来れば、入りたくないけど。
「早乙女君、激気を出して」
「? おう!」
私の言葉に怪訝そうに見つめてきた早乙女君が激気を放出した瞬間、木々の間から此方を覗き見ていたおサルさん達は総髪を逆立てて、逃げていった。
ごめんね。すぐに帰るから。
圧倒的な捕食者の威圧は恐ろしい。
私のスネーク拳の激気はちょっと怖いから、こういうことには使いたくない。そう考えながら走っていると三人と揉めるライム君の声が聞こえてきた。
ライム君も私の匂いに気付いてくれたのか。真上に向かって飛び上がる。その刹那に私は両手に激気を集めて、横回転と縦回転の二つの球体を重ね合わせて、激気を込めた蛇の一撃を振るい、放つ。
「スネーク拳、大蛇砲!!」
「獅子咆哮弾!!」
「咆咆弾!!」
「オラだけ獣拳を使えんのじゃがああああ!!?」
「それは、また後日だね」
そんなことを言いながら、私はライム君の目の前に立って、響君とムースも一度自分を倒した相手の前に着地し、早乙女君はハーブの目の前に躍り出た。
「よう。追い付いてやったぜ、この野郎」
「獅子と虎の獣拳使いか」
「オラは白鳥の予定だ!」
スワン拳ならバット・リー様かな?と小首を傾げつつ、私と戦いたくないのかライム君の顔色は優れず、ずっと申し訳なさそうにしている。
「幻獣の王には届かん…!」
黄金の闘気は轟き、地を揺るがす。
ハーブの他者を圧倒する強烈な威圧に早乙女君達も気圧され、冷や汗を流しながらも構えを解かず、絶対に勝つという意思を持っている。
これなら、大丈夫かな?
「良かろう。相手をしてやる」
そう言うとドラゴン拳の構えを取った。
────だけど。無形の構えだ。
「ドラゴンに構えは存在しない。我が爪牙を以てお前達を切り裂き、砕き、進むだけだ」
彼女が一歩踏み出した瞬間、早乙女君は形振り構わずにハーブへとパンチを繰り出す。だが、分厚く存在する闘気によって拳を当てることすら儘ならない。
「ライム君、今回だけかな。全力で相手してあげるからソッチも全力で来なさい」
「オレは、戦いたくないけど。戦う!」
やっぱり、虎の強さとポテンシャルに任せていた頃よりも数段強くなっている。けど、どこか寂しさを感じる。……ごめんね、ひとりで寂しかったよね。
私達の結婚や恋仲になる中、自分だけ取り残されるような恐怖を彼に与えてしまった。それだけは、彼に謝らないといけない。