天道道場を訪問して三日ほど経ち、私達は無事にお父さんの仕事を終えたつもりだったけど。どうやら私達にはまだ仕事……というよりやることがあるらしい。
「小鎌、天道達の近くにいればお前の体質改善のヒントもあるだろう」
「うっ。やっぱりそうなるわよね」
そう書斎の椅子に腰掛けたまま、チラリと私に視線を向けるお父さんに俯く。
私もその稀有な特異体質なのだけど。
「姉ちゃんは姉ちゃんだよ。まあ、池に落ちるおっちょこちょいなところは見習いたくないけど」
「なんですって、この句っ!!」
「句は悪口じゃないってば」
包帯を巻いた愚弟の頭をバシバシと叩きつつ、私の体質改善と天道道場の関係性は不明だけど。どうやったら治るのかを調べる必要性は確かにある。
「で、オヤジはどうしたいんだ?」
「私個人としては向こうに建てた別宅を二人に与え、そこで過ごして天道早雲と早乙女玄馬の監視を行いつつ、体質改善のヒントを得ることを勧めたい」
「お父さん、句は炊事洗濯できないわよ。さらに家事も掃除も出来ないわ。修行馬鹿、体力オバケ、喧嘩をこよなく愛する馬鹿よ」
「う、うむ、そうだな」
「オレってそんな風に思われてたのか」
地味にショックを受ける句の頭をバシバシと叩く。「男は馬鹿な方が可愛いものだってお母さんも言っているでしょう?」と伝えれば「それもそうだな。でも、姉ちゃんのほうが可愛いぞ」と言ってきた。
まあ、私は確かに可愛いわね。
「……ところで、家宝の大鎌は何処だ?天道道場に言ったのなら返して貰えると思ったのだが」
「え?」
「ああ、そういや忘れてた」
そういえば言ってたわね。いや、私も忘れていたから何も言えないけど。本条家の家宝「大鎖鎌」は明治時代以降、八宝斎の手によって盗まれている。
ただ、こちらは真偽不明だ。
小柄な盗っ人と聞けば八宝斎の事を連想するものだが、当時の武道家には小柄な人も多かったらしいし。斯く言う曾祖父・糸色姿も小柄な剣客だったそうだ。
「(私も鎌術は使えるけど。分銅術は句の強さに劣るし、素手の戦いなんて大変だからやりたいのよね。でも、天道道場と関わるなら試合もあるわね)」
「姉ちゃん、悩むなら突っ込めば良い」
「……私は野蛮なのは嫌いなのよ」
「姉ちゃん、馬鹿になるのは意外と楽しい」
「……んんんっ、もう!分かったわよ!一緒に住んであげるけど、家事は分担するわよ!!」
「やったぜ」
まったく本当にしょうがない弟ね!!
「ああ、それから糸色本家の令嬢も一緒に住むことになるが粗相はしないようにな。一応、向こうは本家筋になるからな」
「「は?」」
待って、責任重大すぎないかしら?