リングの中央に移動し、銀色の棒を槍のごとく構えると小太刀さんはや長柄の最長を目測で測りつつ、私の目の前に移動し、左右に三本ずつ、合計六本のクラブを握り締めて投擲の構えを取っている。
今の間合いは私に有利だけど。
武器の多さと手捌きの速さは少なくとも向こうの方が上だ。九能先輩の妹ではなく彼女自身の技量はおそらくあかねさんや小鎌さんに匹敵する。
「千手こん棒乱れ打ち!」
「覇極流千峰塵!」
まさに千手の如く数を増す突きを棒の先で受け、突きの衝撃を利用してボクシングで言うところのカウンター・パンチのようにギミックを仕込んだ彼女のクラブを粉砕する。
「流石、お強いですわね!!」
「そっちも中々に強いよ!」
そう叫びながら私は棒を振るい、高速の突きを繰り出す。が、小太刀さんは棒を引く刹那の瞬間にリボンで輪を作り、棒の柄を力強く締め付ける。
「フフフフ、この程度の突き等、お兄様の剣を躱してアルバムを破棄していた頃に比べれば他愛なし!」
「やはり僕のアルバムを捨てたのはお前か」
セコンド席に座る九能先輩の悲しみを帯びた声が聴こえるけど。今だけは無視だ。流石に小太刀さんに意識を集中しないと負ける。
狙うのはリングアウトかKO勝利だ。
格闘新体操のルールで打撃戦の使えない私だと大怪我を負わせてしまう可能性があり、リボンもあまり練習したとはいえ付け焼き刃も甚だしい。
「先生、この棒壊すけど。ごめんね?」
そう言って私はグルグルと棒を振り回し始める。だんだんと速度を増す棒の動きに危機を感じ、後ろに飛び退こうとした小太刀さんだったが、竜巻の求心力には逆らえず、私に向かって吸い込まれる。
「覇極流秘奥義降龍天臨霹!!」
「人力竜巻!?しかし、竜巻といえど中心点は無風。この黒バラを受けると良いですわ!」
「なッ、自分から竜巻に入るなんて!?」
応援に来ていた人達も巻き込み、強烈な竜巻を生み出す私の攻撃に驚愕するも竜巻の中を舞う人を踏みつけ、進み、真上から放たれた黒バラのを花束を受け、私は両端から粉々に砕ける棒をリングの外に捨てて、あかねさんの投げてくれたリボンを掴み、真上に飛ぶ小太刀さんを見据える。
「行きますわよ、切さん!」
「来なさい、小太刀さん!」
私の振るうリボンは真っ直ぐ彼女の手首に巻き付き、小太刀さんの振るったリボンもまた私の首に巻き付き、ギリギリとお互いの事を締め付ける。
「あぐっ!?」
「くうっ!?」
首が締まる痛みに呻き、小太刀さんの事を締め付けるリボンの柄を放しかける。───っ、糸色家に名を連ねるのなら、負けるわけにはいかない!!
リボンを掴み、身体を捻って小太刀さんを力任せにリングから引っこ抜き、そのままリングの外に向かって放り投げると同時にリングを切る。
「けほっ、けほっ…!」
危うく窒息するところでしたけどね。
「…………流石ですわね。今回は私の負け」
そう実況席の机の上に立つ小太刀さんは宣言し、ウルウルと潤んだ瞳で九能先輩の方を指差す。
「そこまでお兄様の事も想っているのなら私も喜んで交際を認めますわ!!」
「交際?」
「なんと、そうだったのか」
いつの間にか私の隣に立っている九能先輩は嬉しそうに笑い、私はどういうことなのかとあかねさんと早乙女君を見るも二人ともビックリしている。
「小太刀さん、どういうことかな?」
「どうもこうも無いだろう。僕と交際するために切君は格闘新体操の代表を引き受けたのだ」
「それは違うかな。私が助っ人を引き受けたのは怪我をしたお友達の代わりで、交際するためなんかじゃないのは確かだよ」
そもそも私には許嫁的、そんな感じのもいる。
まだ会ったことはないけど。
その人を裏切ってまで九能先輩とお付き合いしたいとは思わないから、私は素直に「ごめんなさい。実は許嫁がいるんです」とだけ伝える。