「……え、やだ、地獄?」
熱くて暗い場所に寝転んでいた事に驚きつつ、そんなことを呟いてみるものの、返事は返って来なかった。いや、それよりも私は、胸を貫かれたはずなんだけど。
確かに、服には穴が空いている。
「死んじゃったのかな、私」
そう呟きながら立ち上がって、うっすらと見える道を歩いていると笑い声や話し声が聴こえる。でも、その声の主は見えないし、姿を現さない。
私の事を見ているのは分かるけど。
あとは見えないから分からない。
カコンと舌を鳴らす。
五人ぐらい、いるかな?
「よう。こんな所に何のようだ?」
「うわあ、ミイラ男だ」
ちょっと感動する私の首に向かって走ってきた刀の一撃を引き伸ばす前の如意棍槍の穂先で受け止め、飛び散った火花の先に見えるミイラ男の眼光を見据える。
悪鬼羅刹の類いかな?と考えていたその時、私の受け止めていた刀の刀身が燃え上がり、慌てて飛び退くと地面に火の粉が舞い、炎が拡がっていく。
「糸色のガキにしちゃ胆力はあるみてえだな。着いてこい、閻魔の爺がテメェに話したいことがあるとか言ってやがるからよ」
「閻魔の爺、閻魔様ってお爺さんなんだ」
「間の抜けたこと言ってねえで来い」
「ねえ、ミイラ男さんの名前は?」
「志々雄真実だ」
ししおまこと。
どこかに載っていたように思うけど。上手く思い出せない。いや、思い出せないようにされているのかな?と思いつつ、ししおさんの後ろを着いていく。
クスクスと笑う女の人の声、毅然とした男の人の靴音、ししおさんの近くに纏わり付いた音の正体は彼の事を慕っている二人組の男女だった。
彼は、どういう人なんだろう。
そんなことを考えてしまう。
「爺、連れてきてやったぞ」
「志々雄よ、貴様には大王様を敬えといつも言っているだろう。恩情無く地獄に住まえるのは、貴様の剣の腕前のみだと思い上がっているわけではないだろうな」
「
巨人のように大きな赤色の狩衣風の着物を纏った二人を見上げ、私は閻魔大王様の沙汰を聞いて、私は地獄と天国のどっちに行くのかな?と想像する。
「久方振りだな、糸色景」
「? 私は糸色切……えと、糸逢切ですよ?」
糸色景様は、もっと穏やかな人だと聞いている。
「うむ、お前の認識は何一つ間違っておらん。だが、お前が胸の奥に秘めた『地獄の鍵』の封印を担う魂こそ糸色景その物なのだ」
閻魔大王様の突然の宣言に驚きつつ、私は自分の胸を触るように左手を添えたまま、ポツリと「私の中に糸色景様の魂が宿っている?」と呟いてしまった。