「左様。百年の間、西洋妖怪、中国妖怪、日本妖怪の狙う我が奥義の証『地獄の鍵』を宿す人間は糸色一族とアマミ一族の酋長のみ」
アマミ一族というのは昔見つかった日本近海に住む部族でしたっけ?と考えつつ、私は意外な事実に少し頭を悩ませてしまう。
私の知らなかった糸色家の歴史だ。その事を知ることが出来たのは嬉しい。けど、もう私はあの世に来てしまっているから、知っても意味はない。
「しかし、その強大すぎる力を一人だけに集める事は余りにも無理を強いてしまう。故に、儂の編み出した八つの奥義は八人の人間に宿っている」
「八つの奥義……八大地獄かな?」
「ホウ、流石に聡いな。その通り、お主と糸色景、糸色一族に宿っているのは地獄の鋼『武頼針』を封印する鍵よ。時折、お主も感じていた気配、アレもまた近くに『地獄の鍵』を宿したものがいる故だ」
そう言うと閻魔大王様は私の身体よりも大きな右手を突きだし、私の目の前に翳す。よく分からないながらも私も右手を差し出して、手を重ねた瞬間、私の身体を鮮烈な衝撃が突き抜ける。
「地獄究極奥義は人の身では扱えぬ。だが、それ故に鍵の所有者足り得るのだ。────しかし、お主の命を奪った邪龍を討たねばならん。故に、未来の糸色切、お主の修める毒蛇の牙を使えば今一度、お主の生を呼び起こす事は出来るだろう」
その言葉に首を傾げつつ、ゆっくりと右手を見ると異質な硬度を持った五指の先に出来た爪を見る。スネーク拳の秘伝書に載っていたものだ。
───だけど、余りにも醜く恐ろしい技として秘匿された危険すぎる秘伝の技に少し戸惑い、私は閻魔大王様とししおさんの事を見つめる。
「安心せよ、此度の死は閻魔帳には載っておらん」
その言葉に苦笑を浮かべ、私は自分の胸に爪を突き刺す。五回の内、一度目を自分に使うことになるなんて想像もしなかったかな。
「閻魔大王様、ありがとうございます。残り4本の爪は此処に置いていきますから、私みたいにどうしても必要な人に使ってほしいです」
「糸色一族はどれもこれも人のためにと自己犠牲の激しい一族よのう。が、お主の言葉は聞き入れた。お前の託した真毒、儂が真に救うべきと判断した者達に使うことを約束しよう」
「ししおさん、貴方にも私を案内してくれたお礼をしたかったんですけど」
「なら、俺の墓に糸色の漫画でも供えとけ」
「……フフ、分かりました。貴方のお墓、絶対に見つけて糸色景様の漫画をお供えしますね!」