糸色家に問い合わせても幻獣拳の事は分からず、ただ糸色景様の住んでいたという東京の商家に向かえば手懸かりは掴めると教えて貰えた。
「(ただ、相楽家に入るのは危険だ)」
彼処は糸色家の人間でも安易に踏み込める場所じゃないってお父さんが言っていたし。相楽左之助。糸色景様と結婚した明治最強の喧嘩屋であり、近代に於いて唯一「糸色家の血筋」ではないにも関わらず、蛮竜を振るえた理外の存在だと聴いている。
彼の物語は多く存在する。
赤報隊に所属していた話し、日本を救った話し、果てには月の民すら倒したという話しも聴いている。荒ぶる化身、修羅ではなかったけれど。
唯一、不破と引き分けた存在─────。
その亡霊が居るとも聞いているけど。
その噂の真偽は定かではない。少なくとも糸色家の人間は襲われた話しは聞かない。でも、私は糸色景様に瓜二つだとしとりお婆様に言われた。
ひょっとしたら、会えるかな。
そんなことを考えながら、マンションのドアを開け、小鎌さんと句君に「校長先生に呼ばれているから先に行くね」と伝えて、ドアを閉め、降りていく。
エレベーターは酔うから使えないのである。
「……っと、お迎えなんて珍しいかな」
「OH!!ダディーと呼んで良いのデスヨー!」
「あはは、お義父さん呼びでいいかな?」
そう笑いながらマンションの前まで迎えに来てくれた校長先生もといお義父さんと話しつつ、一緒に歩いて学校に向かう。バスや車は無理だって先に教えている。
だけど。たまにイタズラするように車に乗るように勧めてくるからお義父さんは苦手だ。あと似非英語がすごく気になってしまう。
「ダディ、息子の嫁に手を出すか!!」
「タッチー、違うのデスヨー!新しくやって来る教師にまず会わせようと思っていたのデース!」
「「新しい教師?」」
壬生先生、リストラ?と少しだけ考えながらも校門を抜けて、九能先輩と一緒に校長室に入り、その新しい先生のことを待つ。
しかし、十分、二十分経っても現れず、困惑していると早乙女君と小さな女の子が部屋に入ってきた。あの人、すごく珍しい身体をしているかな。
「ムッ。どうかしたのか、切君」
「ううん。なんでもないよ、ちょっと類様と同じ体質の人を初めて見て驚いているだけ」
かなり、珍しい体質だからね。
気になっちゃうかな。