「来ないわね」
「来ないな」
「……なんでだろ?」
お父さんとお母さんに来て貰ったのに、何故か二ノ宮先生は家庭訪問に来てくれなかった。早乙女君かあかねさんのところで何かあったのかな?
私は形式上は糸色を名乗っているが、切は糸逢の姓で学校に通っている。世襲制の「糸色」だけど、あと一年後には九能か糸逢のどちらかになる。
「……また早乙女か?」
「
不機嫌になるお父さんを諌めながら、トランクケースを開けるお母さん。あれは糸色景様の使っていた許容量の決まっていない不思議な四次元カバン、お母さんが結婚するときにお婆ちゃんに貰ったそうだ。
「ででん!あ、これ邪魔だわ」
お茶目にトランクケースを開けたお母さんが取り出したのは『鍵』のように見える2メートル近い銀色の槍だった。けど、どこか邪悪な気配を感じる。
「代、切が困惑しているぞ」
「え?ああ、ごめんね。この『鍵』は異世界や並行世界に扉を繋げる鍵でね。私が目君と出会ったときからずっと武器にもしている武器だよ」
「鍵が、武器…」
そっと私は自分の胸を押さえる間も「ホントならキーブレードとかエクスカリバーとかが良かったんだけどね」とお母さんはお茶目に笑う。
キーブレードとは?
不思議に思いながらもお父さんを見ると「今度はどんな厄介事に巻き込まれたんだ」と溜め息を吐いているのに、楽しそうに見えた。
やっぱり、お母さんのこと大好きだよね。
私もお父さんとお母さんみたいになれるかな?と考えていたとき、ポンと何かを思い出したようにお母さんは手のひらを叩いた。
「そういえば切に伝えることがあったのよ」
「なに?」
「貴方、お姉ちゃんになるからね」
「???」
おねえちゃん?
……え、お姉ちゃんなの?
ウ~ン、お姉ちゃんってなんだったかな?
お姉ちゃんとは?
「おい、切がまた困惑したぞ」
「ハハハ、そういうこともあるわよ」
私、16歳。
妹か弟が産まれます。
わあお、お姉ちゃんです。
「オレ、聞いてねえんだけどぉ!?」
「あら、昔の言葉使いに戻ってるわよ」
「んんっ、私聞いてない!」
お母さんにそう言うと「まあ、そういう異世界もあるのよ」と笑って誤魔化すお母さんに、なんとか言おうとしたけど。結局、何も言えなかった。
けど、お姉ちゃんかあ……。
「あれ?九能家に嫁いで良いのでは?」
「却下だ。お前は糸逢家だ」
そこは、許してほしいかな。