今日も二ノ宮先生は来なかった。
「どうしたのかしらね」
「さあな」
お父さんとお母さんも長期間の滞在になると理解し、私と一緒の部屋に寝る準備を始めている。初等部の頃まで一緒に寝ていたから久しぶりかな。
「なぜ、私が真ん中なんだ?」
「私は当然目君の隣だからよ?」
「えと、お父さんはイヤだった?」
「……嫌ではない。が、困る事もある」
険しくなるお父さんの顔に小首を傾げるとお母さんはケラケラと楽しそうに笑いながら、お父さんの腕に身体を寄せ、私も真似て寄せると溜め息を吐かれた。
やっぱり、悪いことしたのかなあ?
悲しくてお父さんを見ると顔をしかめたまま目を瞑っているばかりで、私の事を見てくれない。
「お母さん、お父さんが……」
「ンフフ、違うわよ。目君たら自分の娘と一緒に寝るなんて想像していなかったから戸惑っているのよ。変に生真面目だから仕方ないけど」
「そう、なの?」
「黙って寝なさい」
そう言うとお父さんは私とお母さんの掴んでいる両腕を振り上げて、万歳と両腕を掲げるように眠ろうとしている。肩凝りが酷くなりそうだけど。
「私は仕事を残しているんだ」
「……ん、わかった」
しょんぼりとしながら布団の中に戻り、ズーンと重たい空気を出しているとお母さんがお父さんのお腹に股がり、大きな仮面を張り付けた。
「よいしょっ、と」
「お母さん、それなに?」
「安眠用の石仮面を着けただけよ。安心して、脳みそを刺激する骨針は取っているし。無駄に危ないことは折っておいたわ」
よくわからないけど。
流石はお母さんなのだろう。そんなことを思いながら、うごかなくなったお父さんを見る。「wryyyy」とか変な声が聞こえるけど。
本当に良いのかな?
「ンフフ、切も使いたかったら使う?ただし、着けたら朝の決まった時間まで何をされても身動ぎ出来ないけど。九能君、そういうの好きなんでしょう?」
「(なんでお母さんが知っているんだろう?)」
不思議に思いつつも渡された石仮面を受けとり、コクコクと気がつけば頷いてしまった。えと、お父さんにも聞こえているけど。
大丈夫なのかな?
そう考えながらも受け取ってしまった仮面をどうしようかと悩みつつ、勉強机に置いて布団に戻り、お母さんを見ると「我が家は安泰ね」と笑っていた。
確かに、そうだね。でも、私はお母さんみたいに色んな所に行ける力は持っていない。在るとしてもいずれ『鍵』は渡さないといけない。
ゆっくりと目を閉じて、眠りにつく。
私は、幸せすぎるかな。