ムースと早乙女君の卑劣な戦いは始まった。
女傑族に伝わる女子供の護身用アイテムを使ったイタズラ合戦は三日三晩続き。あかねさんとシャンプーは物凄く顔色を悪くしながら登校してきた。
「癇癪玉、癇癪玉が」
「やめるね、花粉はやめるね」
「重傷やね」「重傷かな」
私と右京さんは机に突っ伏したまま譫言のように護身用アイテムの事を繰り返し、呟く。すると、傷だらけの早乙女君が登校し、席に座ると天井に突き刺さった。
「ワハハハハッ!!引っ掛かっただ!」
ガラリと窓を開けて入ってきたムースの笑い声と、頭だけ天井に突き刺さったまま動かない早乙女君を交互に見比べ、早乙女君の椅子と机を調べる。
両手を組み、人差し指を突き立てた腕がある。
「なにこれ?」
「ひでえな、カンチョーかよ」
「かんちょ?」
「切ちゃんは知らなくていいヤツだ」
句君の言葉に小首を傾げてしまう。
初めて聞く言葉かな。いや、長野に居たときに、従兄弟の男の子達が「くらえ!かんちょー!」とか言っていたような気がする。
あとで、九能先輩にも聞いてみよう。
九能先輩は私の知らないことを色々と知っているし。小太刀さんも解説に加わってくれて、とても頼りになるんだけど。サスケ君は「お止めなされ。お止めなされ」と、いつも焦っていたけど。
「トドメじゃあぁっ!!」
「よくもやりやがったな。ムースっ!!」
天井から頭を引きずり出した早乙女君はムースの剣を足で挟み取り、直立の体勢で三角締めを極める。完璧に極った物を解くのは至難の技だ。
「コショウ爆弾!」
「ぶふうぇっ!?」
「オラの方が一枚上手じゃあ!」
「待ちやぶぇっくしょん!」
なんだか大変な事をしている。
「みんなー、ホームルームの時間だから席に……なんで天井に穴が開いてるのー?!」
二ノ宮先生にどうやって説明しようかと考えていたら「先生、早乙女君が壊してました」と五寸釘君が代わりに応えてくれた。
「ありがとう。五寸釘君」
「良いんだよ、悪いのは二人だから」
そんなことを話していると、黒板に「土日の水難訓練の実施!」という言葉が書かれる。もう夏休みは終わったのに、海での活動をするんだ。
「校長先生の提案で、今週の土曜と日曜に友引高校の生徒と一緒に水難事故を防ぐお話をします!みんな、夏は終わってないよ!」
「先生、遊びたかったのね」
「ああ、そういう?」
「二泊三日の泊まりだからグループ分けをしてもらいます。あっ、あと泳げない人や酔いやすい人は見学していても大丈夫だからね!」
泳げない人。酔いやすい人。
その言葉に、みんなの視線が集まる。