「九能ちゃん、幼なじみがいるのよね」
「ムッ?天道なびき、また僕の幼なじみの話を聞きたいのか。全くどうやら僕には語り手の才能もあるのだろうな。良かろう、聞かせよう!」
ツラツラと幼なじみとの懐かしの日々を語り始める九能先輩のお話を聞きつつ、持参していた紙コップにお味噌汁を注ぎ、みんなの前にまた並べる。
「しほと出会ったのも十年近く前だ。艶やかな黒髪、薄く空のように綺麗な青の混じった瞳が今でも鮮明に思い出せる」
その言葉に小鎌さんとあかねさん、天道先輩が私の方を見るものの。「私は長野県出身なので違うよ」と伝える。流石に九能先輩にすごい人なら覚えているだろうし、そう簡単に忘れない。
「しかし、いつかはしほに再会したいものだ」
「なんかオレもウッちゃん会いたくなってきたぜ」
幼なじみのいる二人の黄昏れた雰囲気にどうしようかと思いつつ、私は眼鏡を外してレンズに着いた汚れを専用のハンカチで拭き取る。
九能先輩は、そのしほさんが大好きなんだね。
でも私や小鎌さん、あかねさん、女の子の方の早乙女君にアプローチを掛けているわけだけど。そのしほさんが来たらどうするつもりなのかな?
「なあ、なびき先輩」
「あら、なに?
「恋人になると何があるんだ?」
「そうね。私と付き合ったら可愛くて美人な恋人が出来るし、仲良くデートしてご飯を食べに行けるわよ。男一人だと入りにくいケーキ屋とかカフェもね」
あまりにも打算的な言葉に嬉しそうに想い出を話していた九能先輩まで不機嫌そうに顔をしかめながら「恋とはそういうものではないぞ」と訴える。
妥当な反応だと私も思う。
「ケーキか。オレは肉の方が好きだな」
「風情がないわよ、愚弟が」
「情緒どうなってるのかな」
私と小鎌さんの言葉に句君は首を傾げ、悩む。
「よし、なびき先輩付き合おう」
「良いわよ。1万円ね」
「姉ちゃん、買い食いで金がない。くれ」
「あげるわけないでしょうが!?」
「切、これが馬鹿のあしらい方よ」
「成る程、参考になる」
天道先輩の言葉の重みに感心していると、なぜか私の事を見据える九能先輩が……いや、私というより私の頭の上を見ている?
「子ブタ?」
「Pちゃん、着いてきちゃったの!?」
「ああ、あかねさんのペットだったよね」
頭の上に乗っていた子ブタをあかねさんに渡そうとしたら早乙女君が割り込み、そのまま地面に置いてしまった。抱っこぐらいさせてあげればいいのに。
意外と嫉妬深いのかな?