「しくしく。私は可哀想な水着」
「すごくハイカラでかわいいのに?」
「「え?」」
私の呟きに早乙女君とあかねさんは驚愕し、早乙女君の事を助けるために集まってくれたクラスメートや友引高校の生徒達まで戸惑っている。
何かあったのかな?と考える。が、何かを見つけることは出来ず、左目を閉じたままゴーグルを外し、早乙女君の事を観察する。
うん、やっぱりハイカラな水着だね。
「本当なら貴女みたいに綺麗な子に着て欲しかったけど。サイズが合わないわ」
「確かにデカいな」
「ああ、何がとは言わんが巨大だ」
「うむ、大きいものはよいものだ」
「……エッチなのはいけないと思う」
友引高校の男子達に、そう文句を言いながら胸を隠すように抱き締めると何故か余計に興奮したように叫び声を張り上げる彼らに困惑してしまう。
九能先輩もそうだけど。
どうして、男の人は胸が好きなのだろうか。
歩くときにバランスを取りにくいし、走ったりすると擦れるし、足元を見るときも見えなくて困るときもあるんだけど。
そう思っていると早乙女君が「胸の事は良いから早く助けてくれよ」と言い、私達も水着の求める理想の相手を探して、砂浜を歩いていく。
「句君、水着の求める理想の相手って、どういうものなのかな?」
「そりゃあ、海パンじゃないのか?」
「じゃあ、句君のものとか?」
私と句君はそんなことを話し合いながら、砂浜を歩いていると剣道部を見つけ、その防具袋の中に見覚えのある聖刀と木刀が置いてあった。
「帯刀先輩、来てるのか?」
「ううん、三年生は交流戦をするから遠くに行くとは言っていたし、埼玉にある銀成高校だったはずだから違うんじゃないかな?」
句君にそう伝えると「じゃあ、どこから流れ着いたんだ?」と不思議そうに彼は呟いた刹那、飛んできた石を句君が受け止め、そっちに顔を向ける。
「石はやめとけ!」
「うっさい、ばーか!」
「地元の子供かな?」
「切ちゃんは怪我とかしてないよな?」
「うん、大丈夫だよ。ありがとう」
しかし、本当に悩ましいかな。子供が人に石を投げるなんてあり得ない。なにか事件にまきこまれているなら、私達も手伝ってあげたい。
だけど、今は早乙女君を助けるためにカッコいい人を見つけないといけない。
「句君はカッコいいのに、なんでだろうね」
「さあ?」
「まあ、水着相手でも浮気したら刺すね♪︎」
「なびき以外に惚れるヤツはいねえよ」
自信満々に句君は宣言し、私も同意する。一生に一度、糸色家は恋をする。なぜ、一度だけなのかは分からないけど、恋をするのだ。