早乙女乱馬の偽物・公紋竜くもん りゅうの求めるモノは早乙女玄馬の封じた無差別格闘早乙女流の邪拳「海千拳」という流儀だそうだ。
その技や流儀の詳細は不明。
そもそも無差別格闘流の門下ではなく、只の友人でしかない私が奥義の事を聞ける訳もないけど。あの早乙女玄馬の編み出した流儀だから。
すごーく気になっているかな。
「よう。待ってたぜ、糸逢」
「時間丁度のつもりだったんだけど。ごめんね」
私の事を石階段の上に立って見下ろす公紋竜の事を見上げつつ、正式に申し込まれた決闘ということもあり、私も糸色流の糸巻きの家紋を背負った胴着と袴を身に付け、境内の砂利を踏みしめる。
「先ずは糸逢おまえを倒し、次に早乙女乱馬を倒す」
そう宣言する公紋竜の言葉を聞きつつ、カバンの中に仕舞っていたメガネケースに眼鏡を入れ、家宝「如意棍槍」を地面に突き立てる。
「糸逢切、流儀は破傀拳」
「ハカイケン?仙術じゃないのか。まあいい、お前を倒せば親父の仇になる。公紋竜、早乙女流山千拳。女だろうと容赦しねえぞ」
「フフ、別に構わないかな」
ゆっくりと手招きしてあげると怒りを露にした公紋竜は豪快に両の腕を振るい、さっきまで私の立っていた場所を薙ぎ、杉の巨木を粉々に粉砕する。
その圧倒的な拳圧にビックリしながら、飛び退いた場所に向かって駆け出してきた公紋竜の手首を突き、痛みに顔をしかめる彼の右腕の肘関節と肩関節に竜頭拳を打ち込み、攻撃の勢いを削ぐ。
「柔な突きなぞ効かん!!」
「
もう関節を痛めて振るえないと思っていた右の裏拳を顔に受け、ミシリと頭蓋に嫌な音を響かせながら、何度も転びそうになる度に砂利を蹴って、踏み留まる。
一撃の重さは、早乙女君以上かな。
「お前を越えて、早乙女を殺す」
「殺す?……フフ、殺す度胸も無い癖に」
クスリと笑った瞬間、公紋竜の顔付きが変わる。
荒々しいパンチのラッシュを受け流し、掻い潜り、避けて山千拳のタイミングを覚える。一番、危険なのは両の腕を使っていたあの技だけだ。
他の技も危険だけど。
あの技に比べると格が違う。
「望み通り、ブッ殺してやる!」
「残念。ハズレだよ」
だんだんと分かってきた。豪快な技を多く使う山千拳はスタミナを沢山使うし、闘気による手足の保護も続けるには力を労する。
「うん、もう覚えたかな」
トンと彼の腕の中に飛び込み、抱き締める。
「さようなら、公紋竜君」
────破傀拳、広背掌
「がああぁっ!?」
背中の筋肉をねじり、両腕の力を奪って、軽く動脈を閉めて意識を落とす。
一発、受けちゃったなあ……。