私と公紋竜の戦いは終わった。
結局、お父さん達の戦いの理由は分からなかったけど。悪いことではないのかもしれない。怖いことではあるけど。早乙女君も無事に勝つはずだ。
「九能先輩、ショートケーキ食べる?」
「フッ。男児たる者、黙ってチョコケーキだ」
「どっちも作ってあるが、男児女児は関係ねえぞ」
そう言って私の前にアイスコーヒーとショートケーキを、九能先輩の前にチョコケーキとホットコーヒーを置いてくれたマスターにお礼を言う。
ここ数日ほどクローズの看板を掛けていて、コーヒーを飲めなくて残念だったけど。一体、何をしていたのかな?と小首を傾げる。
「ムッ。ココアの風味が」
「九能の方は気付いたか。俺のケーキはちょっと苦めに作ってコーヒーとベストマッチするようにしてんだ。本当、美味いコーヒーを淹れられたらねえ……」
どこか悲しみを秘めた目を自分の手のひらに向けるマスターを見てしまう。数日のお休みのときに何かあったのは間違いない。
───けど。私は踏み込めない。
「……そういえば切の方は随分と様変わりしたな」
「? どこか変かな?」
「いいや、魂の色の話だ」
「「いきなり、スピリチュアル」」
思わず、九能先輩と一緒に驚いてしまった。
「どこが変なの?」
「あー、まどろっこしいのは嫌いでな。率直に言わせて貰うが、その『地獄の鋼』は使うんじゃねえぞ。親切や心配で言っているんだ。お前には絶対に使えねえ」
その言葉に困惑する九能先輩と違って、私だけはマスターに言われたことを理解した。どうして、あの世の出来事をこの人が知っているのか。
おそらくこの人はロンの仲間だ。
「ソイツとは別の組織だ」
「……ロンの仲間じゃないの?」
「誰があんな破壊願望持ちのゴミカス野郎と一緒にいるかよ。それと九能も警戒しなくていいぜ、俺達の目的は切じゃねえからな」
「じゃあ、だれを?」
「その答えは『誰も狙っていない』だ。少なくともお前達に危害を加える気はない。第一、切は俺が強いことを最初から見抜いていただろう?」
マスターは確かに強い。我流なのかは分からないけど、素の身体能力は私では足元にも及ばないとは理解しているけど。
「敵でもマスターは優しい人かな。何度でも私を殺せるのに殺さなかったし。デートの相談にも乗ってくれる、頼りになる人だよ」
「よく分からんが切君の言う通りだ」
私と九能先輩の言葉に何か言いたそうにしたけど、深く溜め息を吐いて、マスターは「マジでそういうところはそっくりなんだよなあ」と呟いた。