帰宅後。
天道先輩に告白紛いの事をした句君を折檻していた筈の小鎌さんが刃引きした鎌を折り畳み、両腰の棒状の鞘に納めると此方を向いた。
私も折檻するつもりなのかな?
「ねえ、切さん」
「なに?小鎌さん」
「貴女、
その問いかけの意味の返答次第で対応は変わる。確かに私自身の本名は
政略結婚のように思えるけど。
お父さんとお母さんは恋愛結婚であり、現糸色本家当主の糸色妙様の叔父。北海道の糸色本家の当主だった糸色類様の叔父でもある。
「私と九能先輩は幼なじみじゃない」
「ほんとうに?実は子供の頃に会っていたなんてこともあり得るんじゃないの?」
「長野県と東京都だよ?」
私がそう言えば「それもそうよね。ごめんね、変に勘繰っちゃったわ」と素直に謝ってくれた。私は構わないけど、九能先輩の大切な想い出だからね。
おいそれと冗談で言えることじゃない。
「帯刀先輩なら写真取ってそうだよな」
「冴えてるわね。愚弟、明日の夕御飯は特大ハンバーグを作ってあげるわ」
「マジかよ、姉ちゃん。愛しているぜ」
「か、かっるいわねぇ……」
句君のあっさりとした言葉に私も軽いと思う反面、それだけ素直に思ったことを言えるのだと感心し、少しだけ羨ましくも思える。
未だに会ったことも話したこともない許嫁と結婚する予定の私には姉弟の関係も素敵に見える。許嫁に会ったら私も変わるのかな?
それに、約束は他にもあるから。
「(子供の頃の想い出……ひとりで遊んでいたときに仲良くなった坊主頭の可愛いタッチーならいたけど。九能先輩とは似ても似つかない)」
彼も元気にしてるといいけど。大きくなったら九能先輩ぐらいだろうし、この学校に坊主頭の男の子が居たらタッチーだったかもしれない。
「なんか考え込んでるな」
「私が言い過ぎたからかしら」
「今後も仕える相手だし、謝るか?」
「……謝らなくて大丈夫かな」
私個人の悲観を謝る必要性はない。そもそも二人に謝られるような事はしていないし、謝るより仲良く三年間を過ごしてもらえるほうが嬉しい。
「オレに出来ることあるか?」
「うーん、とくにないかな。句君はいつも通りで良いんだよ、無理して怪我したら大変だから貴方が怪我したら小鎌さんも心配するだろうし。なによりヨダレを垂らしている句君はちょっとイヤかなぁ」