「くっ、殺せ!」
「私達は屈しないどうぞ!」
「なんで嬉しそうなんだ?」
「変態ある」「変態ね」
ピンクとリンクは簀巻き状態なのに言葉で抵抗しているものの、ワクワクと句君とシャンプーの二人を見つめて、とても楽しそうに見える。
何か共通点があるのかな?
「お前達、どうして私を狙うね。昔の事はもう水に流してやると言ったはずある」
「まだ私達は勝っていないどうぞ!」
「シャンプー、必ずやお前を倒すどうぞ!」
そう言うと二人は暴れるけれど。簀巻きのままでは動けず、天道道場の真ん中で、陸に置かれた魚のようにビタンビタンと跳ねているばかりだった。
ちょっと可愛く思えるね。
「けっ。んなもん荷物漁ればいいじゃねえか」
「「変態!変態!変態!」」
「オレは変態じゃねえよ!?」
「じゃあ、私が見てもいい?」
「……どうぞ」
「可愛いから許すどうぞ」
どういう基準なんだろう?と小首を傾げつつ、荷物を漁るも薬毒の種や小瓶があるばかり。着替えや道具もあるけど。狙う依頼書とかはない。
ふとカバンの奥に丁寧に仕舞われた包みを見つけ、硬く結ばれた布を解くと本が入っていた。薬毒の教科書かな?とブックカバーを外す。
「『生意気な幼馴染みは私の虜』」
「ん?」「ホウ」「えと?」
「恋愛小説かな?」
「切ちゃん、貸してくれ」
「? はい」
句君に言われて、本を差し出すと彼は早乙女君とムースを呼び、私達から離れた場所で本を開いたかと思えば食い入るように読み始めた。
ちょっと、気になっちゃうね。
「オラ、吐け」
「くっ。負けないどうぞ」
「リンクを蹴るなら私を蹴れどうぞ!」
二人の反応に苦笑を浮かべる。
「切ちゃん以外集まってくれ。切ちゃん、逃げないように捕まえてくれるか?」
「別にいいけど」
私は見ちゃいけない本だったのかな?
そう思いながら簀巻きのピンクとリンクの口許にお水を注いだコップを近づけ、お腹も空いているだろうからと商店街で買ったコロッケを一口サイズに切り分けて、食べさせてあげる。
「コロッケ美味しいどうぞ」
「おにく好きどうぞ」
「フフ、それなら良かったかな」
ピンクとリンクの二人はあまり食べていなかったのか。句君の分にしようと思っていたコロッケを一人ずつ十個、合計二十個食べてしまった。
いっぱい、食べるのは良いことだね。
トリさんの事を思い出して、やっぱり寂しい気持ちになるけど。私には旦那様も大事な親友やお友達もいる、だから何も問題はないんだよ。
……そろそろ、お話しは終わったかな?
むう、まだ終わってない。
一方、その頃の天道道場の端───。
「何あるか?」
「シャンプー、落ち着いて聞いてくれ」
「……分かったね」
「アイツらの目的はお前を嫁にすることだ」
「は?」
「あかね、お前もあんまり寄るなよ?」
「あたしは大丈夫よ」
「見ろ。この『生意気な幼馴染みは私の虜』にも、猫飯店の外で使われていた母性花がある」
「生意気な幼馴染みは虐めっ子。しかし、ある時、いじめられっ子の手に入れた薬毒の調合法には、相手の狂暴性を沈静化させ、従順にする毒花があっただ」
「ま、マジあるか……アイツら、私にこんなことさせる気だったね?変態すぎるあるよ」