「フッ。私に勝とうなんて百年早いわ」
「その割に冷や汗出てるわよ、お姉ちゃん」
「だまらっしゃい。私はね、女の子に無理を強いて押さえつける男は嫌いなのよ。まあ、句君はちょっと強引すぎる気もするけど」
「そうなの?」
全校集会のために集まった校庭の真ん中、あさねさんと天道先輩の会話を聞きつつ、生徒に紛れているムースの事をチラチラと見てしまう。
みんな、気付いていないのかな?
「(切ちゃん、何見てんだ?)」
私の近くに立っていた句君も私の視線に気付き、そちらを向くとムースの存在に気付いた。小鎌さんや九能先輩、天道先輩と同い年だから、そういうこともあるよね。
と、言えたら良かったんだけどなあ。
「うおおぉーーーー!?なにするだぁ!?」
「何するだじゃねえよ。帰れ」
「アホある」
それは言いすぎなんじゃ?と思ったものの、確かに学生以外も根っこみたいななにかの除去に協力してくれていたけど。ムースも帰るべきだったかな。
「で、どうする?」
「どうするって?」
「切ちゃんのことだ。どうせ、ピンクとリンクの事を気にしてるんだろ?」
「まあ、そうだね。浮気は悪い文明だし、私に母性花を植えた理由も知りたい。私に毒物は効かない事を知らない相手だから糸色家じゃないね」
もしくは、
そんなことを静かに考え込んでしまう。私の実力を測るために、二人を寄越した。おそらく私が弱くなっていることに気付いている人達だ。
この風林町に来てから、私は自分のために戦うことは減った。九能先輩や句君、小鎌さんが私を守るために戦ってくれるからだ。
「ねえ、句君」
「何だ。切ちゃん」
「私と戦うなら何処を選ぶ?」
「船の上だな。酔えば一方的に出来る」
「フフ、そういう冷徹なところも流石だね。小鎌さんなら真っ正面から突撃してきそうなのに、技巧派だからトラップも使いそうだよね」
「姉ちゃんなら何でも使うな」
私の話しに乗ってくれた句君は聞こえるように私の弱点を話し、耳を澄ませたり、心音を確かめる。何人か反応しているけど。
すぐに収まった。
やっぱり、生徒として入ってきてるね。
私が九能先輩と結婚したから、あぶれた何人かが徒党を組み、私の事を狙っている。それは、とても怖くて危険なことだから無茶せずに見極める。
大人数すぎたら私も無理をしないといけないからね。出来るだけ、ほんのちょっとだけ戦略的撤退を行えるようにしておかないといけない。
「切ちゃん、オレも姉ちゃんも味方だぜ」
「知っているかなあ」