「糸色さん、糸色さん」
「二ノ宮先生、どうしたの?」
「この前言ってた親戚ってまだフリー?」
「? ああ、うん、フリーかな」
そういえば九能先輩と結婚した話を羨ましがっていたことを思い出して、ワクワクと私を見る二ノ宮先生の質問に同意する。やっぱり、気になるのかな?
「どういう人なの?」
「糸色流香道の師範だよ。まだ二十歳になったばかりだけど、すごーくカッコいいって小鎌さんや滅さん……友引高校の先生も話していたよ」
「二十歳!?年下かあ……いや、でも?」
ウンウンと唸っている二ノ宮先生に気付いたクラスメートが何人か集まってきて、なんだなんだ?と騒ぎ始める。これは、人が多くなってきたかな。
「どうしたんすか?ひなちゃん先生」
「うーんとね、糸色さんに男の人を紹介して貰ってるの。糸色流香道の師範らしいんだけど。どんな人なのか分からなくて……」
「糸色流香道って、まさか糸色大!?」
「うっそ、この人だよひなちゃん!」
そう叫ぶと何処からともなく新聞紙を取り出したお友達の一人が指差すのは新聞紙の見出しに大きく「糸色流香道、今年も連覇継続!」という文字と、爽やかに笑顔を浮かべる大君の姿があった。
「すんげえハンサムだな」
「くそぉ、糸色は全員美男美女かよ」
「かっこいい…」
「二ノ宮先生、連絡する?」「する」
クワッと気合いの入った目になる二ノ宮先生を応援しつつ、そう言えば言い忘れていたことを思い出す。香道って嗅覚を極めた芸術だから、大君は匂いふぇち?というものを持っているらしい。
「よっし!!婚カツがんばるぞー!」
「「「おー!」」」
フンスと握り拳を作って、高々と突き上げる二ノ宮先生の気合いの入った言葉に、みんなも賛同するように拳を突き上げ、みんなで成功を願う。
「で、この人の趣味は?」
「料理かな」
「好きなタイプは?」
「小柄な人だね」
「年上はOK?」
「大丈夫だよ」
意外と二ノ宮先生も本気かな?
「成る程、私も問題ないわね!」
ルンルンと嬉しそうに職員室に戻っていく二ノ宮先生はちゃっかり私の作ったお弁当(五段重箱)のおかずとお結びをお皿に移して歩いていく。
「何の騒ぎだ、これ?」
「句君は大君のこと知ってる?」
「大?ああ、知ってる。強いぜ」
その呟きに早乙女君は反応したものの、あかねさんとシャンプー、右京さん達によるテストの反省会を受け、しくしくとなきそうになっている。
たまには、そういうときもあるよね。
私は予習も復習もしているけど。
「切ちゃん、大のヤツを進めたのか?」
「? うん、だめだった?」
「いや、問題ないと思え」
おもえ?