やっぱり視線を多く感じる。
私の素性を知っている相手、おそらく糸色家の所有する歴史的価値の有る品物や私の身柄を狙っている人間なんだろうけど。
随分と御粗末な追跡だし、身柄のほうかな?
そう思いながら人目を避けるように観客席の二階の通路に入り、ぞろぞろと私の後ろを着いてきた人達の事を観察する。逆さのV字に四本線のマーク。
「錬金術師が何の様なのかな」
「ホムンクルス糸色景、お前を排除する」
「……ごめん。ちょっと待って貰える?」
自分の台詞に酔っている錬金術師を制止し、静かにこめかみを押さえて溜め息を吐く。なんとなく私も予想していたし、可能性もあると考えていた。
しとりお婆様も私は糸色景様にそっくりだと言っていたけど。写真や肖像画に存在する彼女より私の方が少なくとも体型の凹凸はスゴい。
「錬金術師さん、目で分かるかな?」
「……空色か?」
「全然、そういうのとは違う。私の目は普通で糸色景様は波紋状の変わった瞳孔になることがあったんだよ。おまけに言えば私はホムンクルスじゃないから!」
馬鹿みたいに呆けている錬金術師の顔をぶん殴り、スケートリンクまで吹っ飛ばす。全く確かに可愛くて美人な糸色景様に似ているって言われるのは嬉しい。
でも、私自身は糸色切なのだ。
その事実をねじ曲げるのは許せない。
「関節破壊とパンチ、どっちが良いかなぁ?」
パキパキと指を骨を鳴らして問う。私の事を捕まえて糸色家の実権を奪い取り、今までの悪行を完璧に隠蔽するつもりだったのだろう。
「待て。最後に聞いておきたい」
「なに?」
「お前はホムンクルスに与しているのか」
「その答えはNOだね」
そう言って私は核鉄を取り出そうとする彼らの服の中から武装錬金に必要な道具を奪い、動けないところを手足の関節を外し、あかねさん達を探す。
誰かが関節を嵌めれば治る。
私は殺す殺さないなんていう言葉だけで私の技や流派は相手の戦意を削いでおけば簡単に倒せるし。誰かを無闇に傷付けることもない。
みんな怪我しないように倒すのは本当に疲れるし。私自身が怪我をするかもしれないから、極力戦わないのがベストなのかもしれない。
「あ、切さん!」
「遅れたかな?ごめんね」
お昼を選んでいたあかねさん達を見つけ、少し小走りで彼女達のところに向かうも子ブタはいなくて、やっぱり迷子になったのかな?と考える。
どこか響君に似ているし、元々は彼のペットだったのかもしれないなんて考えながら、私は席に座り、子ブタの事を訊ねる。