「なあ、糸色」
「何かな?早乙女君」
「九能先輩って、変態だよな」
「……何処から変態と定義したら良いのかな」
九能先輩に教えて貰っている事は常識だと信じたい反面、小鎌さんやあかねさん達の反応を見るに、明らかに普通の行為とズレていることは察している。
けど、あれはあからさまだと思うね。
「なあ、糸色」
「何かな?早乙女君」
「糸色って何なんだ?」
「私個人の話?それとも家の話?」
「家の方」
「かい摘まんで言えば五百年の歴史を持つ大名家。妖怪や幽霊を退治する御三家の一角だね。糸色家、花開院家、華院家の三つ。そして、中立組織の光覇明宗とも関わりはあるかな」
そう話すと早乙女君は「妖怪退治の家系ねえ。半分妖怪みてえなのもいなかったか?」と、ブツブツと呟いている声が聞こえてきた。
それに関しては否定しないかな。
何人か妖怪と仲良くしているし。
ご意見番のしとりお婆様は人の百鬼夜行を作り上げた最強の術師だと私は聞いているし。しとりお婆様は先の大戦に、それも最前線で参戦していたそうだ。
私は日本の防衛に当たっていたけれど。
「なあ、糸色」
「何かな?早乙女君」
「あかねって、本当にオレのこと好きなのかな」
「好きじゃなかったらお弁当も一緒に暮らすこともしないと思うよ。それに、早乙女君があかねさんを大切に思っているのは、みんな気づいているし」
「ばっ、……そんなにか?」
「そんなに、だよ」
そう言うと早乙女君はテスト用紙に頭をぶつけるように机に突っ伏してしまい、悔しそうに、恥ずかしそうに、腕枕したまま目だけ此方に向けてきた。
自分の好きだっていう無自覚のアピールに気付いて、それが恥ずかしいのは分かるけど。テスト用紙をぐちゃぐちゃにしちゃダメだからね?
「切君、もう終わったか?」
「九能先輩、まだ終わってないよ」
「ムッ。補習授業で居眠りはいかんぞ」
「寝てねえよ……クソ、九能先輩はオレと同じで補習授業を受けてると思ってたのに」
「フッ。やれやれ何を言い出すかと思えば僕は九能家の嫡男だぞ?文武両道、才色兼備、品行方正、そのすべてを体現しているのさ!!」
「最後の品行方正だけは違うだろ。ふつつは自分の嫁さんに首輪着けたり、犬や豚なんかを髪飾り渡したりしねえよ」
そうなのかな?
でも可愛いからたまに着けていたら、小鎌さんは激昂したり句君は静かに天を仰いで自分の頭に全力で膝蹴りを叩き込んでいるところは見たけど。
カチューシャは可愛いと思う。
ちょっと耳は邪魔だったけど。