「ん?見ろよ、糸色。今夜の特番『北海道の神秘~血塗られた黄金伝説~』だってよ」
補習授業を終えた帰り道。
早乙女君と商店街を歩いていると、家電屋さんの前に置かれたテレビに流れるコマーシャルを見た彼の呟きに誘われ、テレビを見ると、しとりお婆様が映っていた。
「しとりお婆様、なぜ?」
「また糸色の知り合いかよ」
「私のお爺ちゃんの……お母さんだったかな?」
「このババアは何歳だよ!?」
ムッ。しとりお婆様の悪口は許せないかな。
早乙女君は知らないかも知れないけど。しとりお婆様は日本を飛び出して、僅か一年という期間で世界一周を成し遂げた、ものすごーい人なんだよ。
お父さんも尊敬しているし。
しとりお婆様は糸色景様の実子であり、元々は撃剣術の使い手として有名だったし。相楽左之助の後を継ぎ、蛮竜を使えた人だもん。
「しかし、黄金伝説かあ……」
「アイヌの埋蔵金だよね。徳川幕府の埋蔵金なんていうのも聞いたことあるけど。とっくに掘り返されてるのに、みんな頑張っているよね」
「そうだなー、ん?まて、なんて?」
「え?とっくに掘り返されてるのにって言ったんだけど。サージェス財団がかなり前に発掘して、サージェス博物館の設立に使っていたから、みんな知ってて見に行ってるんじゃ……」
「糸色、今のは内緒にしとこうな?」
なんでか冷や汗を流す早乙女君の言葉に頷きつつ、こっそりと「なんで、そんなこと知ってるんだ?」と聞かれ、糸色家はサージェス財団のスポンサーだと伝えると納得してくれた。
「……本当に手広くやってるよな」
「そうかな?」
「家電もお菓子も店もニュースのスポンサーも何処もかしこも糸色の名前があるぜ」
「ウチの家系は特殊だからね。そうやって自分自身を表現できる場所をずっと求めているんだよ。妙様なら陶芸家として、類様は医者として、私は…華道の道に進むつもりだからね」
ゆっくりと横に並んでいた早乙女君の前を歩き、くるりと振り返って彼の事を見上げる。
「糸色家の家訓6条『二兎を追う者は二兎とも取れ』。自分の決めた道を進むなら、寄り道も何もかも楽しんで全部達成するつもりで歩こう!」
「二兎を追う者は二兎とも取れ……か」
「フフ、私のお父さんなんてお母さんと結婚するか家を捨てるかを迫られたとき、どっちも手中に収めて、世界まで救ったなんて言われてるんだよ?」
「世界って、あの妖怪達のアレよりか?」
「あれぐらいじゃないかな?」
そう言って私は早乙女君に不敵な笑みを向ける。