土曜日のお昼時。
リビングと廊下を隔てるドアを力強く開けて入ってきた小鎌さんは無言のままテレビの健康番組のストレッチを真似る私の両肩を掴み、むにゅうっと私の胸元に顔を押し付けるように抱きついてきた。
「小鎌さん、どうしたの?」
「かっこいい太郎、浮気した」
「「は?アイツ、ブッ殺す」」
私の事を本当の妹のように可愛がってくれる優しく素敵な小鎌さんを裏切るなんて許されない。生爪を一枚ずつ剥いで指の神経に釘を突き立てて、死んでも後悔する責め苦を与えてブッ殺す。
「句君、忍びに伝達して」
「任せろ。絶対にブッ殺してやる」
「…………待って、私の勘違いかも」
「姉ちゃんは間違えない。つまり、悪いのは取り柄と言えば顔だけのゴミクズ野郎だ。顔面変形するまでボコボコに殴殺して、全身の骨を粉末にして、神経丸ごと千切って、脳ミソを踏み潰してやる」
「切さん、句が壊れたわ」
「ダメだよ。句君」
「よかった」「生き地獄を味わわせてからじゃないと」
「お前もかよ」
小鎌さんのツッコミを無視して、よしよしと私達の大事なお姉さんを誑かしたゴミクズを成敗するために早乙女君達も巻き込もうとしたその時、ベランダのガラス戸を破って入ってきた男を睨み付け────。
私の渾身の二重の極みと句君のフロントキックがかっこいい太郎の顔面にめり込んだ。
「ブッ殺す」
「浮気は悪い文明」
「ま、まっへくへ」
「か、かっこいい太郎、大丈夫?」
「んぐっ、ぐふっ、誤解だ!!中国で仕事していた途中で崖下に落ちた先に偶然温泉があって、たまたま入浴していた彼女に悲鳴を上げられ、謂れの無い窃盗の罪を被せられているだけなんだ!!」
そう言って無実を訴えるかっこいい太郎の事を見下ろし、私と句君は足に力を込めて、全力で覗きを供述したゴミクズ野郎の事を蹴っ飛ばした。
「無実ではないかな」
「とりあえず、浮気じゃねえなら許す」
「「ただし、泣いても許さない」」
大事なお姉さんを泣かせたからには、徹底的に襲撃して自分の何が悪かったのかを教えて、二度と過ちを犯さないように反省させないといけない。
「…二人とも正座しなさい」
「え、でも」「そうだぜ、姉ちゃん」
「正座しなさいッ!!!」
「「は、はい…」」
なんで怒られたのか分からず、私と句君は素直に正座すると小鎌さんに相手の言い分を聞かず、一方的に攻撃するのはダメだとお叱りを受け、相手の女の子の話も聞いてから沙汰を言い渡すように言われてしまった。
うぅ、ごめんね。