小鎌さんとかっこいい太郎とルージュさんの会話は始まったものの、私は暴れないようにという理由で呼び出された九能先輩の腕の中に収まり、句君も天道先輩を胡座を掻く足の間に収めている。
「なびき、お前はそこまで…!」
「うるさいわよ、お父さん」
「早雲。なびきを嫁にくれ」
「くっ。せめて卒業まで待ちなさい!」
そんな騒々しい騒ぎをみんなが起こす最中も私は九能先輩に抱き締められたまま道場の真ん中で会話をする三人の事を見つめている。
大好きな人の幸せを願うのは当然だよね。
「…九能先輩、頭嗅ぐのやめてほしいかな」
「ムッ。すまない」
「くすぐったいよ」
「乱馬君、九能ちゃんみたいにやってみなさいよ。あかねも頭ぐらい嗅がせてあげたら?」
「出来るかぁ!?」「しないわよ!」
二人の怒鳴り声にビックリしながら、かすみさんに手渡された麦茶を飲みつつ、どうやってかっこいい太郎に小鎌さんを泣かせた仕返しをしようかと考える。
……それにしても、いつまで話しているのかな。
そう思っていた次の瞬間、ルージュさんが自分の頭に麦茶をぶちまけて、阿修羅の姿に変身すると同時に小鎌さんに襲い掛かっていく。
「唱ッ、下がっていろ!!」
「ちょ、ちょっと!?」
かっこいい太郎は背中に六本の腕のパンチを受けながらも小鎌さんを守り、壁に激突するときも自分の身体を盾にして小鎌さんを守った。
一応、及第点をあげよう。
「句君、お姉さんのピンチだから行ってらっしゃい」
「やっぱり最高だぜ、なびき!」
今週号のファッション雑誌を手に持ったまま立ち上がった天道先輩を褒めて、句君は駆け出していく。私も着いて行きたいのに九能先輩は私の事を送り出して、離してくれたりはしなかった。
むう、どうしてかな。
「切君は待機だ。いつも前線に出ようとするから止めて欲しいと本条姉に頼まれている。もしも追いたいなら、僕の事を倒していきたまえ」
「……それは、卑怯だよ。あかねさん、早乙女君、お願いできるかな?」
「仕方ねえ。行くか」
「分かったわ、切さん」
私のお願いを受け入れて、聞き届けてくれたあかねさんと早乙女君のふたりは小鎌さんと句君とかっこいい太郎とルージュさんの事を追いかけてくれる。
「九能先輩、私も行きたいかな」
「ダメだ」
「早雲さん、将来の息子の句君のピンチだよ」
「まだ認めていないぞ」
認めているのに、認めないというのはダメなことだと私は思うんだけど。どうしてもダメなら本気で止めているんじゃないかな?