二重の極み「総身」を使い始めて十数分ほど経過している。かなりキツくなってきたし、何よりシバリングの操作なんて全神経を費やす行為だと思う。
悠久山先生は呼吸さえ二重の極みに昇華していたみたいだけど。流石に、その領域に踏み込めるほど私は強くなっていない。
総身の超振動を増して突進する。
あかねさんの右手と私の左手は僅かコンマ数秒の接触、弾ける片腕を振り絞ってお互いに手刀を斬り結ぶ。
───同時、私の脛を狙った蹴りは足を半身に引くことで躱され、あかねさんの気力が爆ぜ、彼女の右膝が私の脇腹にめり込み、相討ち覚悟のカウンター気味に放った私の掌打があかねさんの顎を捉える。
「無差別格闘天道流────」
「糸色流総合格闘術────」
お互いの制空圏を塗りつぶし、技が放れる。
「飛竜断絶脚!!」
「総身・鎬断ち!!」
茜色に燃える竜の闘気を纏った剛斧の如く振り下ろされる蹴撃を肩口に受け、地面にクレーターを作るほど派手に沈む身体に総身を維持できず、咄嗟に左腕を力ませ、渾身の手刀打ちを同じく肩口に叩き込み────。
私達は同時に倒れた。
いや、僅かに私の方が先に倒れた。
「………………今の、なに?力が入らないんだけど」
「……鎬断ち。糸色流は気功を使うから、その気を流す経絡を一撃で両断する技だよ。総身を……二重の極みを打ち破られたのは初めてかなあ……」
ちょーっと、ショック。
そう話しながら痛む身体を無理やり起こして、あかねさんの事を見ると自動的に彼女の上半身も起き上がり、いつの間にか集まっていた知り合いの拍手が聴こえる。
「あはは、恥ずかしいわね」
「フフ、そうだねえ」
「……ところで、あの爆発みたいな気って」
「ああ、あれはまだまだ未完成だけど。二種類の気を体内で練り上げて、放出する気と蓄積する気を同時に発動して起こる静動轟一っていう技なんだけど……どうだったかな?」
「どうだったってビックリしたわよ。パンチもキックも変則的に加速するし、鉄球で殴られたみたいな痛みで泣きそうになったわ」
わざとっぽいイタズラするように言うあかねさんに左手を差し出すと彼女も手を差し出してくれ。満足できる勝負をプレゼントしてくれたことを喜ぶ。
「あかねさん、今回は負けたけど。次は私が勝つから油断しないでほしいかなあ?」
「あら、次も私が勝つわよ?」
「「うふふふふふ」」
「おめえら、終わっても今度は舌戦かよ」
「大変素晴らしい戦いであった!!」
私の事を九能先輩が、あかねさんのことを早乙女君が抱き上げて、保健室に運んでくれる。
「フフ、優しいよね。私達の好きな人♪︎」
「そうね」
「え?」
私の言葉にあかねさんが頷いた瞬間、早乙女君はビックリしたような顔になったかと思ったら、二人とも顔を真っ赤にして黙っちゃった。
フフ、かわいいねえ♪︎