「お母さん、降ろして欲しいかな」
「だめよ~♪︎」
スリスリと私の頬に頬っぺたをくっ付けて笑うお母さんの姿にだんだんと昔の事を思い出してきた。昔はいつもこうして抱っこしてもらっていた。
そもそも仕事を放って私の事を愛でるお母さんに戸惑ってしまう。優しくて綺麗なお母さんも好きだけど、なんで血の臭いがするの?
「孫を誑かすゴミを殴っただけよ」
「? まだ、赤ちゃんいないよ?」
「ゴフッ……ふ、ふふ、効いたわ」
どうして、そんなにショックを受けた顔をするんだろう?と不思議に思いながらもお母さんの腕の中を抜け出し、本を読むために椅子を動かして、リビングに侵食し始めた私の本棚を弄る。
「何を読むの?」
「『殺戮の機巧~日本の隠す兵器~』」
「もっと可愛いものを読みなさい」
「ちなみに著者は妙様のお爺ちゃん」
「あのハゲ爺ッ…!!」
しとりお婆様の血を継ぐ四兄弟の長男であり、妙様の先代当主だった人。糸色家の血筋を濃く受け継ぎ、火炎を生み出すなんていう武勇伝を聞いたことある。
「けど、先代様って蛮竜を使えたの?」
「使えていたわよ。少なくともお妙が当主に成るキッカケを作ったのはハゲ爺のせいよ。まあ、そのおかげでかなり膿を除去したわけだけど」
そう言うと私の事を抱き上げたお母さんは大きな胸に埋めるように抱き締めてくれた。
「切もみんなのために頑張ってくれて、ありがとう。勝手に許嫁を決めた上に、卑怯と言ってしまってごめんなさい」
「……ん、いいんだよ。お父さんに理由はもう聞いているし。それに妙様の事を狙っていた派閥を一通り抑え込める情報はお父さんが集めてくれたからさ」
ゆっくりとお母さんの顔を撫でると、少し安心したように笑ってくれた。でも、お父さんとお母さんは無理しすぎていると私は思う。
いつもいつも隠し事は多いし。
「えいっ」
「ふふふ、ぷにぷにした手じゃ叩かれても痛くないわよ。というより、これ目隠しのつもり?」
「お母さん、私の目って」
「綺麗よ。目君に似た綺麗な青色、私の薄い黄緑色の色彩も混じっているわ。だから、とても綺麗で素敵な宝石とおんなじよ」
私の言葉を遮って力強く抱き締めてくれたお母さんを今度は私も抱き締めてあげる。うん、私の目を汚いなんていう人はいない。
二人の色を貰った、大切な宝物だから。
「ありがとう、お母さん」
「可愛いわね。本当に」
「あとね、タッチーに会いたいんだけど」
「それはダメよ。男はね、ロリコンなのよ」
「ろりこん?」
ろりこん、ってなんだろう?