お地蔵様に取り憑かれたムースの行動は日に日に悪くなり、眠気に負けて、シャンプーに倒れ込んだり、ラーメンに頭を突っ込んだりと大変だ。
「うむ、まさに珍事じゃなあ」
「お爺ちゃん、何とか出来ない?」
「儂に言われたものう。いくら切ちゃんのお願いでも神仏に手出しすると閻魔に怒られてしまう」
まるで、会ったことがある言い方だね?と思いながらもムースの事を心配する早乙女君とあかねさんの二人を手伝ってほしい。
もしくは、お手伝いを変わってほしいかな。
「糸色殿のおかげで売り上げは落ちておらんが、如何せん食器代に食費を考えると今のムースはハッキリと言えば邪魔そのものじゃ」
「で、どうするんだ?」
「早乙女君のパンチで止めるのは?」
「殴ったら死ぬだろ、今のムースだと」
そう言われると困るかな。
力付くで止めることは出来ない上、神仏に手出しするという難しい立場に私達は悩みつつ、シャンプーにそっくりすぎるお地蔵様を見据える。
「シャンプー、デートしてあげたら?」
「あかねがするよろし」
「させるわけねえだろ」
みんな、自分の意見を押し通そうと話し合いは難航してしまっているし。ムースは心配だけど、神仏に好かれてしまったのは彼の責任でもあるかな。
「こうなったら即席娘溺泉に落とすか」
「確かに、神仏じゃなくなれば!」
「……石が人になんのか?」
「神様が宿ってるし、いけるあるよたぶん」
そんなことを話していたその時、ムースの身体に抱きつくシャンプーに気付いた。いつの間にか入れ替わっていたのねと驚愕する私に、みんな何か言いたそうにしているけど。
いったい、どうしたんだろう?
「私は、細目じゃないね」
「気配が似てるから」
「これだから近眼共は!!」
私は遠近感が掴めないだけだよ。
それを調節するために眼鏡を掛けているし、左目はもう話しているから言わないけれど。ほとんど見えないから、仕方ないと理解してほしいかな。
「切君、ムースが引き摺られているぞ」
「九能先輩、アッチのシャンプーを止めて!」
「よく分からんが分かった」
私のお願いを受け入れてくれた九能先輩は木刀を抜いた瞬間、凄まじい勢いで吹き飛ばされてしまった。物理的に攻撃することは無理みたいだね。
こうなったら、みんなでシャンプーを説得して、ムースとデートしてもらうしかない。でも、どうやったらシャンプーは応じてくれるのかな。
「シャンプー、どうしてもダメなの!?」
「私は、ムースなんてどうでもいいね」
「ほんとうに?」
本当にどうでもいいの?