翌日の月曜日。風林館高校の下駄箱で上履きに履き替えながらあかねさんと話しつつ、またしても他校の生徒と勝負することになったことを教えられる。
しかも、また相手に有利な条件だそうだ。
「スケートの練習?」
「えぇ、Pちゃんを奪われないためにね。それなのに乱馬ったら滑れないのよ」
「あらぁ……」
ちょっとだけ残念な物を見るように早乙女君を見下ろすと「うるっせぇーよ、すぐに滑れるようになってやら」と物凄く不満げに教室に行ってしまった。
早乙女君にも苦手な物はあるのねと少し親近感を抱きつつ、あかねさんと一緒に教室に向かう途中、九能先輩を見掛けると小鎌さんと天道先輩が一緒に歩いていた。
……何故でしょうか、胸がチクチクする。
句君を見ても何も思わないのに不思議だな。
「切さん、怒ってる?」
「え?ううん、怒ってないわよ?」
「そう?」
怒るようなことではない。
そもそも私が怒る理由も意味もないから、何かしら勘違いされちゃったかな?と思いながらも教室に入ると同時に飛んできた掃除用具を避ける。
「乱馬っ、また何かしたの!?」
「オレじゃねえよ!句が小太刀に変な事を言いやがったせいだ!!」
そう叫ぶ早乙女君の指差す場所に句君は既に着席していて、私とあかねさんの後ろに立っているこの句君は何になるのだろうかと彼を見上げる。
「何者っ!」
「何者も何もオレは本条句本人だ。彼処に座ってるのは普通に偽者だろう。第一、切ちゃんはオレを起こしに来てくれたじゃねえか」
その一言にクラスがざわめき、私達を見る。
「そういうものは内緒にするらしいよ?」
「そうなのか?じゃあ、今のなし」
「「「もう遅いよ!!」」」
口々に「転校日が同じだから怪しいとは思ってたけど」「やっぱり駆け落ちとかか?」「ばかだな、東京に駆け落ちしてどうすんだよ」なんて矢継ぎ早に私と句君の関係を邪推する言葉が飛び交う。
「句君とはお友達だよ」
「うそだー」
「本当の事言って良いのよ?」
「本当の事よ?だって、私も許嫁いるし」
続けざまに「ちなみに私は許嫁には一度も会ったこともないし。ひょっとしたらすごく年上かも知れないけど」と、そう言うと何故か空気は凍った。
「本条、マジなのか?」
「ああ、本当の事だ。オレの家は切ちゃんの家系に百年近く仕えているし、恋愛云々の感情は持ち合わせてねえな。それにオレの好みは年上だ」
じゃあ、あの天道先輩への告白は本気なのね。
冗談で言っているのなら本気で注意して、お仕置きするつもりだったけど。