「営業妨害?」
「せや。犯人はアイツや」
「タコとたこ焼き職人?」「なんで?」
「知らん」
モグモグとお好み焼きを食べるあかねさんと早乙女君の二人に麦茶を差し出しながら、右京さんは悩んでいるけど。外のたこ焼き職人は話し掛けてこない。
というより女の子が近付いたら逃げる。
「うっちゃん、何かした記憶あるか?」
「いや、無いねん。乱ちゃんに捨てられて、屋台も盗まれて自暴自棄起こして日本諸国のお好み焼き屋で修行したり、お祭りで屋台出したりしてただけやし」
「乱馬、何かした記憶ある?」
「聞くな。あれはオヤジが悪い」
「けど。句君や九能先輩は話しかけても問題ないのに、どうして女の子はダメなんだろ?」
「アレやろ。昔ながらの職人気質で、女に話し掛けん硬派なんやろ」
「乱馬とは大違いね」「早乙女君、そうなの?」
「違う!」
そう言って否定する早乙女君の顔にお多福面が貼りつき、句君は飛んできたお面を受けた瞬間、内側に塗り込まれていた液体で右目が塞がった。
これは、ボンドの臭いと感触かな。
「うちの乱ちゃんに何すんねん!!」
「切ちゃんはいつもこんな感じなのか……」
こんな形でそう言うことは言われたくないかな。と、思いながらも句君は床に正座し、私の事を見上げてきた。こういことって、あかねさんと早乙女君の前ではしたくなかったんだけど。
そう不満を呟きながら、舌を伸ばす。
「うおっ、蛇みてえだ」
「なんか、エッチね……」
「っ、そこ、うるさいかな」
私の細長い舌の上を通って、唾液に含まれた弱酸性の体液は句君の顔に貼りついたボンドを溶かし、軽くハンカチで拭いてあげると完全にボンドは消える。
「……あかねさんもやってあげたら?」
「そ、そういう趣味はないわよ!?」
「蛇の獣拳の能力か……奥深いぜ」
早乙女君は私の行為に感心しないでほしいかな。
「チッ。逃がしてもうたか」
「で、どうするよ?このお面は外れねえし、口のところは小さくて食えないぞ」
早乙女君の呟きにあかねさんと右京さんの顔付きは変わる。料理を手伝ってあげたいけど、句君の顔を洗って、弱酸性とはいえ毒を受けた彼を連れ、私は一時的にマンションに帰ることにした。
「悪いな。切ちゃん」
「良いかな。けど、九能先輩にあの舌のこと教えちゃダメだよ?どちらかと言えば、あれは臨獣拳の技術を流用したものだから」
まあ、こんなに長い舌を見たら怖いよね。
私は嫌われたくないから、内緒にするんだよ。
もしも教えたら怒るからね?