「…………(また、憑いてきてる)」
「き、切ちゃん先輩、激カワすぎる!」
こそこそと私を追跡するために電柱や看板、立て札に身体を隠して憑いてきている風林館高校の1年生、九能先輩とデートしているとき、写真を取っていたりする事に最近気づいてしまった女の子を見据える。
隠匿術の卓越さは私より上かも知れない。
───とは言え。あまり後ろに憑いてきている彼女の事を好ましく思えない。こう、邪念めいたものを感じるし、私の胸やお尻を良く見ている。
「ねえ、尾行バレバレだよ?」
「ひょおおっ!?は、はひっ、顔可愛いッ!!」
「ん、ありがとう」
一応、お礼を伝える。
しかし、私と同じくらいの背丈だ。
「あ、あの?スパチャしていいですか?」
「そのすぱちゃっていうのはわからないけど。お金を受けとるつもりはないかな。それより、どうして私の事を付け回すのかを聞きたい」
そう言って私は彼女が逃げないように片手を掴み、いそいそと商店街に出来たウマカバーガーに連れていき、ハンバーガーと珈琲を頼み、彼女はシェイクとハンバーガーを頼み、一緒に席に座る。
「教えてくれるかな?」
「ひいぃっ!推しとハンバーガー食べてうぅ!」
またしても感涙する彼女に差し出された生徒手帳を受け取るけれど。名前は口頭で教えてもらえるほうが嬉しいから見るのは後かな。
「風林館高校2年生、糸色切だよ。色づく糸を切ると書いて、糸色切と読むかな」
「んぐっ、風林館高校1年生!
そう宣言した瞬間、彼女の頭は弾けて店内の外に向かって蹴り出された。だれが?と通路を見ると去年の暮れぐらいに戦った猩々*1が立っていた。
「猩々、なんでここに?」
「話す前に食べ終えとけ」
「ふざけてるの?」
私は粉々にガラスの砕けた窓を飛び越え、商店街の通りに吹き飛ばされた久我銀子に近付くと、彼女はふらつき、血を流しながら立ち上がってきた。
「え、えへへ、痛いなあ……」
「動かないで、大丈夫?」
「切ちゃん先輩、優しいなあ♥好きぃ♥」
「猩々、女の子を蹴るなんてどういうつもりかな」
「馬鹿野郎が、ソイツはお前の敵だ」
そう言って近付いてきた猩々と久我銀子の間に立ち塞がろうとした刹那、仰け反るように後ろに倒れる久我銀子に気づき、掴もうとした、その時だった。
「糸色っ、そこを退けッ!!?」
────猩々が、吹き飛ばされた。
「えへ、先輩との遊びを邪魔しないでほしいです」