シャーッとスケートリンクの上を滑っていくあかねさんと対照的にリンクの外壁を掴んで歩くことに慣れようと奮闘している早乙女君と響君を見つめる。
何故か響君は赤面して鼻血を出したけど。
「けっ。とんだスケベPちゃんだぜ」
「誰がスケベだ貴様ッ!?」
「糸色、あの子ブタは「させるかあああっ!」うおっ、ぎやまあぁ!!?」
いつものようにパンチしようとした響君は私の胸に顔をめり込ませ、軽やかに跳んで逃げた早乙女君はスケートリンクに着地した瞬間、ぐるぐると回転して対面側に激突し、しくしくと泣いている。
「……いつまでくっついてるの?」
「す、すまないいぃぃぃぃっ!!!」
私の呟きに響君は絶叫して走り去ってしまった。
あかねさんに視線を向けると呆れたようにリンクの上に倒れて上手く立てずに四つん這いになっている早乙女君の手を引き、走り出しているのが見えた。
烈嚆銀盤拳を教えたいのに早乙女君と響君の二人とも自由すぎる。あかねさんに指南書を渡して帰っても良いけど、あの三千院帝と白鳥あずさの二人の実力も気になる。
「あ、いつぞやのシャルロットを奪った女!」
「Pちゃんね」
「ふんだ!…………そのメガネ、大きくて可愛い」
ぷいっと顔を背けたかと思えば私の眼鏡を見つめて変な事を言い出す白鳥あずさの伸ばす手を弾き、外壁に背中を預けながら眼鏡を取る。
流石に、ちょっとムカついてきた。
「欲しいな、ちょうだい!」
「……この眼鏡は私のお婆様の形見なのよ。大好きなお婆様の遺品を貴女に渡してあげる理由が一体何処にあるの?」
「え、あ、ごめんね?」
ちゃんと真っ直ぐに告げると素直に謝ってくれたものの、チラチラと申し訳なさそうに私の眼鏡を見る彼女に深く重く溜め息を吐いてしまう。
あかねさんの子ブタを欲しがったり、人の形見を欲しがったり、そういうのは本当にダメだと思う。あの三千院帝はずっと傍に居てくれるかも分からないのに、あまり無茶するのはやめてほしいかな。
「この眼鏡はダメだけど。一緒に可愛いものを探しに行ってあげるから仲直りする?」
「うん。ごめんなさい」
「フフ、謝れて偉いわね」
「……ママのばぶちゃんになっていい?」
「ばぶ?」
いきなり謎の言葉を話し始める白鳥あずさに戸惑いつつ、抱っこを要求してきた彼女をお姫様抱っこして、スケートリンクの上を滑っていく。
私は何をやっているのだろうか?
「切さん、なにしてるの?」
「あずさ、何してるんだ?」
「私にも分からないわ」