クリスマスに向けて、色々と準備を進めるみんなと分かれて、私は小鎌さんと句君を連れて長野県の信州市に居を構える巨大武家屋敷「糸色本家」に来ている。
何だか年々増築している気がする。
「ムッ。来たか糸逢」
「糸益君も来たんだね」
「今の当主はオレだからな。
「ん、ありがとう」
糸益首の指差す方に腰掛ける滅さんと糸文家の当主を勤める年配のお爺様に一礼し、二人の間にスカートを押さえて座り、正座する。
糸色家の大広間。
昔、ここで片目を潰されかけた。
穏健派筆頭の
その側近の
二人とも強くて最も当主に近い。
嫉妬も逆恨みも多く受け止める立場だと言うのに、二人は涼やかな表情で負の感情を受け流している。けど、あの心の強さは羨ましく思うかな。
「切、飴食べるかい?」
「お爺様の飴は好きなので貰います」
ゆっくりと差し出された飴を受けとり、ラッピングを外して口に含む。相変わらず、遅効性の毒を含んだ飴に、よく懲りないかな?と苦笑を浮かべてしまう。
「私にはないわけ?」
「滅は年寄りに優しくないから無しじゃわいのう」
そんなことを話していると空気が重くなる。ご意見番の緋村しとりお婆様の入室、その後ろを着いてきた先代当主にして糸色家最大の脅威とも言える。
しとりお婆様の四兄弟の長男────。
妙様の祖父たる
「今回の集まりに妙は休みだ。あのバカ孫が、海外の個展だか何だか知らねえが行きやがった。遠のバカ孫にやらせても良いが、おめえら遠と大に仕切られるの嫌いだろ?だから、おめえらの大嫌いな俺が仕方なく仕切ってやってやるよ!」
グッと親指を突き立てた糸色険に集まっていた分家筋は凄まじい殺気を放ち、あの滅さんまでもが呆れたように溜め息を吐いている程に面倒臭い。
「ん?お、切も来てるじゃねえか。
「お父さんは私の白無垢の仕立てをしてます」
「あー、結婚するんだったなあ……お祖父ちゃんは悲しいぞ。あの九能家のバカ息子に嫁がせるには、切は才能がありすぎるからな」
「えと、ありがとうございます?」
「なにより乳とケツがでかい!」
やっぱり、私、この人は嫌いかな。