糸色険の取り仕切る会合の雰囲気は最悪と言えるけれど。私の方にチクチクと小言を言う人はいない。それは助かるけど、胸を褒めるのは止めてほしい。
そういうのはお婆様にするべきかな。
「さて、悪ふざけもこれぐらいにするか。本日の会合の目的は次の当主を決めること。もしくは、当主代理を立てて仕切るヤツを決めるためだ」
ふざけた空気を消し、彼は静かに告げる。
みんなの雰囲気を引き締まって糸色険を見つめて、自分達の子供や孫、あるいは自分が次の当主に選ばれる事を期待し、言葉を待ち望んでいる。
「糸色家18代目は俺のバカ孫の糸色遠だ。ただし、補佐として
革新派の糸勺家と穏健派の糸逢家の二つを添えて、どちらにも属さず、ずっと中立の立場を担う緋村家の遠君を妙様の後釜に添えるのは利に適っている。
────だけど。
他の分家筋は不満その物だ。
糸色本家の蛮竜を自在に操り扱える序列「8位」の私に負けるとなれば、今までの奮闘も何もかもが無為に帰す。糸色険はそれを分かっているのに選んだ。
三つの派閥を上に添えることで派閥間の牽制は減るし。糸色本家の取り巻く雰囲気も改善する可能性はある。ただ、私に大君と遠君を止める自信は無い。
二人とも私より背丈も高く筋肉質だ。
力負けするし、押さえ込まれたら勝てない。
「切さん、応援しているわよ」
「滅さん、代わって欲しいかな」
「いやよ、婚期が伸びるわ」
そう言って私のお願いを断る滅さんに悲しい気持ちになりながら、私の事を呼ぶ糸色険の笑みにイヤな気持ちを込めて深く溜め息を吐いてみる。
「分かるぞ。切、オレもいやだ」
「遠に話し振っておけば終わる。我慢しろ」
遠君と大君の言葉に頷きつつ、私は左側の席に座り直す。
「宝槍を掲げよ」
その言葉に従って私達は槍を取り出す。
遠君は虎翼を引き抜く。
私は如意棍槍を取り出す。
大君は鬼十字・四法印を構える。
やっぱり、大君の槍はおおきいかな。
「各々の家宝に誓い、次代へ繋ぐように」
「「「拝命致します」」」
ゆっくりと私達は答える。
本当はイヤなんだけどね。
というより糸逢家は当主補佐になって良かったのかな?なんて思っていると、ワシャワシャと遠君が私の頭をいきなり撫で始めた。
なんで、撫でるんだろう?
不思議に思っていると、しとりお婆様も私の頭を優しく撫でてくれた。むう、みんなして私の事を子供扱いしているのかな?
私はもうお嫁さんだよ…!