「絵馬の神馬……かわいいね」
「え?」「冗談やろ」
「でも、お鼻のところ可愛くない?」
そう話しながらあかねさんは「受験成功」と文字を書き、右京さんは「商売繁盛」と書いているけど。二人とも小さく「結婚できますように」と書いている。
私と九能先輩は「幸せな家庭」だったけど。
まあ、そういうこともあるよね。
「ムッ。殺気を感じる!」
「わあ、絵馬にそっくりな神馬かな」
「神主の腕前に感心するわね」
「喜んどる場合か!」
二ノ宮先生を追いかける神馬の前に立って、突進を受け止めると同時に引っ張り、地面に寝かせるように倒し、ワシャワシャと鬣の辺りを撫でてあげる。
「落ち着こうね~」
「な、投げたわね…」
「あかね、お前もあれぐらい出来るだろ」
「やろうと思えば出来るけど」
何か話している?と早乙女君達の方を見ると、お菓子やお団子を沢山持った二ノ宮先生が見えた。たまに思っていたけど。二ノ宮先生って子供っぽいかな?
「ブヒヒィン」
「ムッ。どうした、鼻デカ丸」
「出世丸じゃ。間違えるでない」
神主の言葉に九能先輩は「これで出世するのか?」と不思議そうに神馬・出世丸の事を見つめる。自信満々にお鼻をヒクヒクさせて、可愛いかな。
そんなことを思っていたら私の振り袖の帯を噛んだ出世丸は走り出してしまった。振り袖の下には動きやすいタイツとか履いているし、恥ずかしくはないけど、
「なんかエッチやで切ちゃん!?」
「切君の帯を返せ!」
「ブヒヒィン」
「切さん、それなに?」
「スクラッチ社の作った新しいトレーニングウェア*1だよ。来年度の雑誌のモデル頼まれたときに貰ったんだけど。変かな?」
「ううん、すごく綺麗だと思う」
「フフ、ありがとう」
あかねさんに褒めて貰えたことを喜びつつ、私は振り袖の襟元を正して九能先輩の取り返してくれた帯を巻いて、元通りの格好に戻る。
しかし、困ったかな。
みんなの注目が私に集まっている。
「……なあ、切ちゃんてサイズどんくらいなん?」
「右京!?」
「サイズって何の?」
「胸」
「右京!?」
「九能先輩、オレ達は向こう行ってようぜ」
「ムッ。茶菓子か…羊羮を貰おう」
そそくさと離れる九能先輩と早乙女君に小首を傾げながら右京さんの方を見る。胸のサイズと言われても前より大きくなっているとしか言えないかな。
「Gだよ?」
「「(G………………え?何センチ?)」」
?
二人ともなんでも固まるんだろ?
変なことは言っていないはずなんだけど。