「おめぇ向こうにも付くのかよ」
「付く付かないじゃないかな。私は頑張っている人を応援するし、お友達のために自分の出来ることを最大限活用しているつもりだよ」
「けっ。どうだか」
「……早乙女君、格好付けるなら立って欲しいんだけど。腰に抱きつかれるのは流石に恥ずかしいから」
「お、おお、分かってる…!」
私の腰から肩に持つ場所を変えて、ゆっくりと立ち上がった早乙女君にパチパチと拍手を送るあかねさんの目付きはスゴく怖いことになっているけど。
早乙女君に恋愛感情は皆無だね。
こう、グッと来るものがない。九能先輩には、ちょっとだけ感じたけど。今は何も感じないし、気のせいだったんだろうと私は納得している。
そもそも私と彼は無関係だ。
「二人に教えるのは中国拳法の『
「知らないわ」
「オレも知らねえな」
そう言うと思っていたので民明書房の開いて、烈嚆銀盤拳の項目を見せてあげる。対氷上戦闘用に構築したという局所的拳法ではあるけれど。
スケートリンクなら自由に出来るかな。
「要するにスケート拳法ってわけか。格闘技ならオレでも体得できそうだぜ」
「胡散臭そうな本」
「私の高祖母の本だよ」
スッと二人が視線を逸らした。
「……まあ、基本的に烈嚆銀盤拳はスケートと同じように滑る方法も載っているし、早乙女君なら直ぐに使えるように思うけど」
この拳法はあかねさんのほうが向いている。
奇想天外な動きをする早乙女君の無差別格闘早乙女流より正統派な無差別格闘天道流の動作は正確だし、直ぐに覚えるだろうね。
「烈嚆銀盤拳の奥義と基礎は回転力」
シャーッとリンクの上を滑る途中、身体を捻ってその遠心力を利用した強烈な蹴り技「
「私の速さも中々でしょう?」
「フッ、スピンとジャンプの併用技だね」
「ソイツを覚えりゃオレも…!」
「乱馬は先ず走れるようになろっか」
そう言ってあかねさんは早乙女君の背中を押し、ワタワタと氷を踏み締めて止まろうと頑張る彼を応援し、私もそちらに視線を向ける。
しかし、早乙女君は止まれなかった。
緩やかに加速していき、みんな避けてくれたおかげで事故は起こらなかったものの、見事に壁に衝突して彼はピクピクと痙攣している。
「陸上なら強いのにね」
「そうね。大丈夫かしら、彼」
「う、うるへぇ…」
あら、まだ意識が残っているのね。