肌寒い夜道を歩く。
「九能先輩、半纏て意外と温かいかな」
「うむ、そうだろう」
電灯と月の照らす薄暗い道。
九能先輩の大きな手を握りながら一緒に歩いて、私と小鎌さんと句君の暮らすマンションではなく、九能先輩個人で借りたというマンションにやって来ている。
お泊まりしようと言われた。
「……着いてこなくていいよ?」
そう言って影に潜む句君達に告げるも「せめてマンションに入るまで見守る」と言われ、仕方なく九能先輩はマンションのドアの玄関まで句君達を連れていく。
「よし、帰れ」「断る」
が、即座に言葉は変わる。
「貴様、本条弟!どういうつもりだ」
「帯刀先輩、オレはこの部屋に何を隠しているのかを知っている。切ちゃんにあんなものやこんなものを使おうとしていることは分かっている」
「帯刀さま、流石に乙女には酷かと」
「サスケ、お前までそっちか!?」
「この部屋、なにかあるの?」
「「それ以上はいけません」」
「う、うん、分かったかな」
いつも以上の気迫を込めた言葉にビックリしながら、部屋に入ることをやめると、今度は九能先輩が不満そうに私達の事を見つめている。
そんなに、この部屋は危ないのかな?
「切ちゃん、いや、切様、その部屋に入るという事はおそらく乙女の尊厳を失います。我々は仕えるべき主の醜態を見るのはイヤです」
「…………九能先輩、ごめんね?」
スススッと句君の後ろに隠れるとショックを受け、項垂れる九能先輩が可哀想で抱き締めた瞬間、素早く部屋の中に引きずり込まれてしまった。
「フハハハハ!!こうなれば此方のものよ!」
「ぇ…?」
パチパチと快音を立てて玄関先の廊下の電気を付けた九能先輩のおかげで、ようやく意識を取り戻すも逃げ場は無くて、槍もいつの間にか抜き取られている。
「く、鎖?」
「他にもあるぞ」
カチャリと手足に枷が付けられ、困惑する。
「く、九能先輩、なんなのこれ?」
「切君は何も考えなくて良いんだ」
「で、でも」
「心配しなくて良いんだ」
「心配するに決まってるだろうが」
「チッ」
私の手足に付いていた鎖を引きちぎった句君を見上げると脇元に抱えられ、困惑する間もなく全力で句君は走り出してしまった。
「あの部屋」
「切様、女の子は知らなくてもいい話というものもあるんです。オレは清い結婚生活は許すが、あれは帯刀先輩の暴走した趣味だ」
「そう、なんだ」
そうこともあるのか、と、少しだけ考える。
男の子って難しいんだね。昔はそんなこと考えたこともなかったかな。