「切ちゃんや。お香を作ったんじゃが」
「お爺ちゃん、お香も作れるの?」
「うむ、無差別格闘流は活殺自在の流派。お香の他にも毒物も何でも作ることは出来るんじゃ!」
高らかにトリカブトやデトロトキシンと書かれた粉末を取り出すお爺ちゃんにビックリした瞬間、私の真横を小鎌さんの強烈な蹴りが突き抜ける。
「学校行く前だし、小鎌さんも嗅ぐ?」
「いやよ。絶対に不埒な目的だったわ」
「そうかなあ?」
句君にお香を焚く壺(登り龍っぽいナマズ)を貸して貰い、お香を焚いてみる。爽やかな香りと、柑橘系の匂いが部屋に広がる。
これは、意外と良いものを貰ったかな。
「……ん…お香って眠くなるのかな……」
うつらうつらと眠りそうになる目尻を擦り、お香の火を消して小鎌さんと句君と一緒にマンションを出る。ちょっとだけ眠いなと思いながら、道を歩く。
「切ちゃん、眠いならおぶるぞ?」
「平気かな。昨日、本を読んでたから」
「カバン預かるわね」
「ん、ありがとう」
なんだか、ポワポワと暖かくて眠い。
「……っと、本当に大丈夫なのか?」
「んむっ、んん~~っ…おれぁ大丈夫だでよぉ…」
「「ン゛ッ!!!」」
ビクンと身体を震わせる小鎌さんと句君の二人を見ながら道を歩いているとフェンスの上を歩く早乙女君とその近くを歩くあかねさんが見えた。
「あかねさあ、おはよただでよぉ」
「え?ああ、切さん、おはよう?」
「句、おめえらどうした?」
「いや、気の抜けた切ちゃんがな」
「うぇらあ、いかまいかあ?」
「ンッ…かわいいわね」
よしよしと私の頭をいきなり撫でてきたあかねさんにビックリしながら、一緒に歩いて校門を抜けて、昇降口で靴を履き替えて、教室に入る。
「今日は短縮授業ばかりだけど。寝ちゃダメよ!」
「ひなちゃんが一番寝そう」
「分かる。寝るな、寝たら焼きそばパンな」
「じゃあ、起きてるにカツサンド」
「もうっ、先生は寝たりしません!!」
二ノ宮先生の言葉を聞きつつ、一時限目の英語の準備を進めていると陽射しが暖かくて、うつらうつらと頭が揺れ始め、眼鏡を外して、目尻を擦る。
「ふわぁ……」「くぁ、むぅ」
「天道さんと糸色さんがアクビなんて珍しい!いっつも先生の授業真面目に受けてくれるのにひどい!!」
「ん、先生あったかいだでぇ」
「ほんとだぁ……子供体温…」
「え?あの?先生枕じゃないよー?」
「こ、これは抱き枕というヤツでは!?」
「抱き枕?」
「ああ、近しい相手を枕に見立てて眠るというカップルや新婚夫婦に起こりやすい現象だそうだ。それを二人がしたということは、だ」
「「「「乱馬ぁ!!」」」」
「なんでオレだけなんだよ!?」