「成る程、邪悪妖怪の仕業というわけか」
オレの説明に納得した帯刀先輩は寝言を呟いている切ちゃんに近付いた瞬間、自己防衛によって攻撃を繰り出す切ちゃんの抜き手と肘打ちを木刀で受け流す。
軽やかに傷付けないように優しく受け、切ちゃんの間合いに踏み込んだ刹那、彼女の両手に闘気が溢れ、強烈な諸手突きをボディーに食らい、帯刀先輩は僅かに床を擦りながら、後退る。
───だが、更に力強く帯刀先輩は踏み込んだ。
「切君、起きてくれ」
「…たっちぃ…」
「起きダブァアッー?!」
帯刀先輩はブッ飛ばされ、どこかに行った。
「痛いって言ってるのにぃ、ひどいよぉ」
「……寝言か、あれ?」
「痛い、ひどい、だと?」
「男子は耳を塞ぎなさい!」
なんだかイヤな予感がする。
いや、男としては是非とも聞いておきたい気持ちの上回るような寝言ではある。が、女子の視線が怖くてオレ達は鼓膜を破る勢いで塞ぐ。
だんだんと頬を赤らめる女子達の反応に聞きたい気持ちが溢れるも我慢し、代わりに緩やかに動き始めた天道の蹴りが乱馬の鳩尾を正確に蹴り抜き、フラフラと廊下に出ていってしまった。
帯刀先輩がなびきを連れて戻ってきた。
「あら、随分と面白い事になってるわね」
「面白いか?天道なびき」
「句君、此方に来なさい」
「? おう」
なびきに呼ばれて近付いた瞬間、オレは蚊取り線香のようなものを差し出された。
「この夏来香を使えば切ちゃんは目覚めるわ。ただし、あの眠った切ちゃんに近付くのは至難。九能ちゃんと連携して捕まえて、嗅がせなさい」
「分かった」「うむ、任せろ」
オレが鎖分銅を伸ばし、音を巻き起こして注意を引き付ける間に帯刀先輩は気配を消し、切ちゃんに抱き付いてお香を嗅がせる。
「乱れ弁天!!」
「んぅ…へび…」
「蛇は切ちゃんだ!」
そう言ってオレは切ちゃんの左腕に鎖を巻き付けたその時、帯刀先輩が切ちゃんを背後から抱き締めて、夏来香の香りを嗅がせる事に成功した。
「……へ、へくちっ…んむ?……ん…」
目尻を擦り、切ちゃんが起きる。
「おはよう、切君」
「……たっちぃ、なんでいるのぉ……」
「……天道なびき、保健室に行ってくる」
「待ちなさい。神聖な学舎で何するつもり」
ゴクリと唾液を飲んだ帯刀先輩を全員で引き留め、流石に風紀を乱しすぎるのはダメだと伝えて、必死に説得し、無事に切ちゃんは起きた。
「……私、変なことを言ってたかな?」
その言葉に答えられるヤツはいない。というより居たらぶん殴ることになる。