「只今よりシャルロット杯を賭けた格闘スケートを開催します!」
そうアナウンスする実況席の方を見遣るとスカーフから首輪に変わっているあかねさんの子ブタがプギプギと必死に暴れているのが見えた。
首輪は動脈を締め付けてしまうから危険なのに白鳥あずさは普通に着けたのね。
「くっ。何故あかね君が彼処に!?」
「ペットを助けるためだよ。九能先輩」
「ペットだと?犬か」
「帯刀様、どうやら黒子ブタのようです」
「サスケか。しかし、子ブタを飼うとはあかね君のチャーミンさ相も変わらず目を惹いてくれるな。当然、僕は君も気に入っているよ、切君」
「そうですか」
「私を挟んで話さないでちょうだい。全くあかねが出場するから来ただけなのに」
天道先輩はそう面倒臭そうに言いつつ、ポラロイドカメラを構えている。早乙女君とあかねさんの写真は色々と高値で売れるらしい。
小鎌さんの写真も売っていたけど。
そう言うのって良いのかな?と思いながら苛烈な戦いを続けるあかねさん達は、三千院帝と白鳥あずさのコンビネーションに翻弄され始めている。
「九能ちゃん、飛び込まないの?」
「天道なびき、僕の事をどう思っているのかは知らないが僕は真剣勝負に首は突っ込まんぞ」
「意外だわ、漁夫の利しそうなのにね」
「幼なじみと約束したのだ」
約束?と私はスケートリンクの上を走る早乙女君とあかねさんの事を見つめながら、そう呟く九能先輩に顔を向けると真剣な眼差しで言った。
「幼なじみ曰く『俺は全ての分野において頂点に立つ男』だ。そう言ってくれたことを今でも覚えている。だから、僕は勝負事に手出しはしない」
「ふぅん。切さん、どう思う?」
なんで、私がタッチーに言った事を九能先輩が知っているのかな?我が家に伝わる格言の筈なんだけど。いや、九能家とはそれなりに交流もあるし。
知っていても、不思議じゃないのかな?
「(まあ、今は観戦に集中しよう)」
そう思いながらあかねさんと早乙女君を掴み、高速回転を始める三千院帝の酷い言葉が私のところまで聴こえてきた。破局させる技って何かしらね?
「乱馬のヤツ、走れないのか?」
「句君、正解です。教えたんだけど、走るところまでいけなかったのよね」
「糸色の指導力でも時間は足りなかったのか」
「糸色というより私の指導力かな。もう少し時間があれば早乙女君
「その言い方だとあかねは覚えたのね」
「うん。烈嚆銀盤拳の奥義を覚えた」
アレは驚異的な体幹を必要とする技だけどね。