放課後の校内。渡り廊下。
「成る程、切君が増えた理由はそれか」
「きゃー♪︎かっこいい!」
「わ、私のタッチーだよ!?」
「えーっ、貸してほしいわ」
「ダメだもん!」
「…………フッ」
九能先輩の腕に抱き付いて、必死に奪い返すけど。ドッペルゲンガーも負けじと九能先輩の腕に抱き付いて、私に対抗してくる。
私をコピーしているから力も同じであり、私の力に対抗できるのも当然と言えば当然だけど。九能先輩、私とドッペルゲンガーに挟まれて、なんでそんなに嬉しそうにしているのかな?
まさか浮気する気かな?
「一旦、落ち着こう。切君じゃない方の君、少し話してもらえるか?」
「え?分かるの?」
「好きな女の子が二人になろうと僕が愛するのは、この切君だけだ」
「タッチー…!」
彼の言葉が嬉しくて、もっと強く抱き締めているとドッペルゲンガーは「まあ、そうですわよね」と呟き、納得してくれた。
でも、ナンパはやめてくれないんだね。
そんなことを思っているとおじ様に仕えていた爺やが廊下に立っていて、私の事を見つけると安堵したように歩いてくる。
「爺や、カーテン直ったのかな?」
「いいえ、そちらはまだでございます。しかし、一時的に幽霊を封じ込めるコンパクトを見つけ、こうして馳せ参じた次第でございます」
「コンパクト」
「はい。こちらにございます」
『封印』と刻まれた手のひらサイズのコンパクトを受けとり、爺やの説明を聞く。要約すると、このコンパクトの鏡を見たら中に吸い込まれ、出ることが出来なくなるという道具だそうだ。
「(サージェス案件にも思えるけど…)」
「なんでえまだ帰ってなかったのか?」
「早乙女君こそまだ帰ってなかったの?」
「おう。居残り掃除させられてた」
「早乙女乱馬、今度は何を壊した」
「ジジイが女子更衣室にいたんだよッ」
それはまた大変な事になっているかな。
「ふむ、そういうことなら」
「え?あ、ちょっと」
ひょいっと私の持っていたコンパクトを取った九能先輩にビックリしながら、彼の方を見ると爽やかに微笑みを浮かべていた。
「早乙女乱馬、僕は野暮用が出来た」
「そうなのか?」
「うむ、少しばかり籠る事になる。だから暫くこのコンパクトを持っていてほしい」
「まあ、そんくらいなら」
ニコニコと笑っている九能先輩にちょっとだけ戸惑いつつ、爺やを探すとパンダの早乙女玄馬の洗髪を行っているのが見えた。
あれは、渡り廊下でしていいのかな?
「切君、いいか?」
「え?」
そんなことを考えつつ、ウンウンと唸るように悩んでいると九能先輩に肩を掴まれ、私はコンパクトの鏡を覗き込んでしまった。
ギュウッ…!と身体が吸い込まれる。
吸引後。渡り廊下。
カランカラン、とコンパクトが地面を転がる。
「こいつを持っとけばいいのか?」
乱馬は廊下を転がるコンパクトを手に取ったとき、微かに声が聞こえることに気づいた。
「さ、早乙女君、ここから出して…!」
「そう焦るな、切君。たまにはこういうのも悪くないだろう?」
「ひやあぁ…な、なんで脱ぐの?!」
「………………出てこい、こんのバカタレ!!」
「ムッ?」「た、たしゅかった……」
「九能、お前は暫く糸色に近付くな!」
「なぜだ!?」「当たり前じゃい!!」