ドシンと鈍い音と共に落ちた先は部屋だった。
特に変わったところはないけど。いつもより身体が重く感じるし、少しだけ倦怠感みたいなものもある身体を動かし、九能先輩を見遣る。
私を庇って背中を打ったせいか。気を失っている九能先輩の上から降りる。私の下着に指を引っ掻けている九能先輩をビンタし、起こす。
「グッ、敵襲か!?」
「敵襲じゃないかな。ハレンチ」
「……男はみなスケベだ」
そう言って誇る九能先輩の頭に槍の柄をぶつけ、薄暗い部屋の中を見回す。蛇と蝙蝠の特性のおかげでモノの配置は分かるし、人も居ない事も分かる。
それにしても、本当に暗いかな。
「しかし、本当に暗くて何も見えんな」
「どうするの?」
「マッチかライターがあれば良いんだが」
「でも、こんな密室で火は危ないから光るものを探す方にしない?」
「うむ、そうするか」
槍を前方に突き出して、距離を計って、壁に到着すると電気のスイッチを探して歩き始める。壁伝いに動けば直ぐに見つかると思う。
そう思っていたのに、先にドアを見つけた。
「でえぇいっ!!!」
渾身の片手突きを繰り出した九能先輩のおかげでドアの蝶番は砕け、部屋の外に出た瞬間、パンパンと快音が響いて私と九能先輩の目の前にキラキラとした紙の切れ端や花が舞う。
「「「「「「結婚おめでとう!」」」」」」
「SURPRISEデース!」
「全く、人気者は辛いものだな!」
「フフ、そうだね。すごーく嬉しいかな♪︎」
学校のみんなに祝ってもらえる嬉しさに微笑み、九能先輩を見ると彼も私と同じように笑っていて、すごくすごーく嬉しそうにしている。
こんなに幸せをいっぱい貰ってもいいのかな?なんて考えながら、あかねさん達のいる方に近付き、「ありがとう、みんな」と伝える。
「早乙女君もありがとうね」
「何の事か知らねえな」
「フフ、そういうことにしておこうかな」
それに、こんな風にお祝いして貰えるのは本当にどう言えば良いのか分からないけど、兎に角、嬉しくて嬉しくて仕方ないかな。
「切君、向こうにケーキがあったぞ」
「ケーキ!」
九能先輩に連れられて、料理の並んだテーブルを見る。匂い、マスターが淹れてくれるコーヒーの香りに気付き、クスクスと笑ってしまう。
自分の事を悪い人のようにいうのに、こうしてお祝いをしてくれるマスターはすごく良い人かな。けど、ちょっとだけ恥ずかしいかな。
「OH!!折角のウエディングなのに新郎新婦がそのままなのは駄目デース!お色直し!ふたりともお色直しするデスヨー!!」