「体育の授業、何するのかな?」
「体力測定じゃない?」
女子更衣室を出て、校庭に向かっていると先日のくノ一の格好をした男の子と戦う早乙女君を見つけ、あかねさんが声を掛けようとした刹那、変則的な踏み込みと速駆けを行い、すれ違いざまに早乙女君の身体に斜め十字の傷が刻まれ、血が体操着に滲む。
「乱馬!?」
「マジで斬ったのか!?」
ザワザワとざわめき、くノ一を遠巻きに見るクラスメート達の目の前に槍を突き立てて、敷居を設けて被害が及ばないように壁を作る。
しかし、それよりも気になることがある。
「貴方、今の技は変移抜刀法だよね。なんで、あなたが日向無限斎の使っていた技を使えるのか。じっくりと教えてほしいかな」
私の言葉に口を閉ざすくノ一。
その視線は私の胸に向かっているけど。そんなことはどうでもいい。お母さんのお友達の見せてくれた秘伝をこの子が使えるのかが気になる。
「退いてろ、糸色ッ……ソイツはオレがやる」
「無茶よ。だって乱馬は斬られたのよ!?」
「ばーろー、よく見ろ。コイツは血糊だ。このくノ一、オレを斬ったように見せかけてるだけで、本気で殺す気なら刀に毒を塗ってるだろうぜ」
「あ、マジだ。しかも絵の具…」
「姑息な嫌がらせだ!」
「ウッ、母ちゃんに怒られた記憶が」
男の子は体操着をよく汚すのかな?
小中高まで、ずっと一貫のところだったし。男の子と話すようになったのも二年前に、こっちに引っ越してきてだから分からない。
「くノ一忍法、紅地獄!」
「しまッ……? おい、何ともねえぞ?」
「乱馬、それなに?」「それ?」
私達の事をすり抜けて、早乙女君に攻撃する。が、早乙女君は特に怪我している様子もなく、私達が困惑していると、あかねさんが早乙女君の襟元を見た。
キスマークだった。
「いやらしい!」
「乱馬、ずるいぞ」
「くノ一といちゃいちゃするなんて、それでも天道の彼氏か!」「オレもキスマークしてほしい!」「ばっか、絶対に高いって!」
ワイワイと騒がしくなる男子と、その男子に呆れと軽蔑の眼差しを向ける女子。私はどっちをフォローすれば良いのかと考えながら、句君を見ると空を見ていた。
「乱馬、上から来るぞ。気を付けろ」
「あ?」
彼に釣られて、私も空を見ると特徴的な大きな唇の三人組が早乙女君に降り注ぎ、ぶちゅーーーっと顔を吸い取る勢いでキスをした。
早乙女君の絶叫に二年生と一年生の教室の窓が開き、惨たらしく貪り食われる早乙女君の姿に悲鳴らしきものが、チラホラと聞こえてきました。
ちょっとだけ、可哀想だったかな。