お好み焼きうっちゃんの暖簾を潜り、齷齪と仕事に励んでいるくノ一隠れ里の忍者小夏の姿を眺めつつ、もう早乙女君を襲う理由も無くなった彼は幸せそうに給仕に励んでいる。
「ありがとうね、切ちゃん」
「フフ、どういたしましてかな」
「まさか、
「そりゃあ良いんだがよお、なんでオレのお好み焼きから肉を掠めとるのか説明しやがれ!」
「はっ、いつものクセで!?」
「クセなんや」「癖なんだね」
早乙女君はヘルシーな野菜お好み焼きを食べ、その隣に座っているあかねさんは「私のエビいる?」とお好み焼きのエビを早乙女君に差し出している。
シーフードお好み焼き。ハイカラだね。
句君の方を見ると、秘伝のタレを掛けた瞬間に白目を剥いたまま、まだ目覚める気配はない。私の付けてもらった秘伝のタレは美味しいんだけど、なんでだろう?
そう不思議に思いながらお好み焼きを食べていると、視線を感じて後ろに振り返る。あるのは、右京さんなら絶対に人前に見せないゴミ袋とポリバケツを見つける。
も、小夏さんが持ち出して、着火した。
「小夏さん、それはダメかな。水を掛けて」
「は、はいっ!」
慌ただしくバケツに水を汲み、ゴミに向かって水を撒いたおかげで大惨事にはならなかったものの、流石に家屋に燃え移る可能性もあるからダメだと注意する。
右京さんに迷惑を掛けるかな。
「ところでよ、その『おひいさま』ってのは、どういう意味なんだ?」
「乱馬、普通にお姫様って言ってるだけよ」
「……糸色、お前はお姫様だったのか」
「どちらかと言えば武家の分家筋かな。戦国時代の上級武家、信濃国の城持ちではあったそうだけど」
「「「いや、それお姫様!!」」」
でも、私は分家筋の娘なのは事実かな。
野心も無いし、喧嘩も嫌い。
格闘技は護身術程度に身に付けているだけ。
本家筋の妙様は強いし、自分を含めて被害や妨害を受けていた糸色家の女の子を守るため、自分の祖父と戦って、蛮竜も継承しているかな。
私には流石に難しい。
勝つことは出来ても率いる事は出来ない。
私にはカリスマ性というものはないし。なぜか、みんな私の胸を見るから、話しも聞いてもらえないときのほうが多いかもしれない。
「……死にかけた」
「おはよう、句君」
「おそるべし、秘伝のタレ」
そう言いながらまたお好み焼きを食べた句君の意識はまたしても遥か彼方へと飛んでいってしまった。