小夏さんの正体が男の人だったり、七夕で変な人に絡まれたりと大変な2ヶ月を過ごし、九能先輩……じゃなくて、帯刀君との久しぶりのデートを楽しんでいたとき、早乙女君達も海水浴に来ていた。
「クラゲの大繁殖?」
「おじさんの知り合いがやってる海の家の危機だからオレ達も来たわけだ」
「ふむ、そういうことなら僕も手伝うべきか」
「良いのかよ。九能先輩」
「男児たる者、人のために動くべし」
モグモグと焼きそばを食べながら、そう言って木刀を構える帯刀君の事を見上げる。みんなのために奮闘する彼もかっこいいかな。
「あかねさん、その水着可愛いね」
「そう?似合うかしら」
クラゲのように綺麗な水着を身につけたあかねさんにアイスキャンディーを差し出して、トタトタと砂浜を歩いて此方に来るお爺ちゃんにもアイスキャンディーを手渡してあげる。
「何味じゃこれ?」
「オレンジかな。私とお揃いだよ」
「おー♪︎スウィート♪︎」
アイスキャンディーを一緒に食べていると、不意にお爺ちゃんの視線が私の方に向き、静かに「景殿にそっくりじゃが、やっぱり切ちゃんは切ちゃんじゃなあ」と懐かしむように呟いた。
私は景様を尊敬しているし、憧れたこともあるけど。誰かの代わりになることは出来ないかな。私は糸色切であり、糸逢切であり、そして、九能切だからね。
フフ、自分で言ってるのに照れちゃうね。
「帯刀君、頑張ってね」
「うむ!」
「早乙女君、槍使う?クラゲも毒あるから」
「錆びねえか?」
「大丈夫だよ。これは銛だからね!」
「確かに、槍じゃないわね」
槍として献上されたらしいけど。
普通に投げ銛だったという話しは糸色家にもよく残っている。まあ、しっかりと妖器物だから、そんなに心配しなくても問題ないかな。
────とは言え、だ。
流石に危なかったら逃げる用意は必要かな。
「あかねさんは、どう思う?」
「アイスを胸に挟むのやめたほうが良いと思うわ」
「スコーンの部分だから汚れないよ?」
「箱入りが極まりすぎッ!!」
なんで、そんなに困っているか。
私にはよく分からないけど、このアイスを抜いておけば良いのかな?と思いながら、スコーンを齧って食べ終える。帯刀君達はもう海の中だね。
「酔わなかったら応援できるんだけど」
「海の波でも酔うんだっけ?」
「うん。浮き輪と無理だよ」
「難儀してるわねえ」
「まあ、それもそうだね」
確かに、ちょっとだけ大変かな。
車も電車も飛行機も何に乗っても酔うから、ものすごーく大変だったけど。