何だかんだと恋運ぶ呪いの花   作:SUN'S

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大海原の海月姫 急

ガタンゴトンと揺れる電車の振動に口許を押さえ、気持ち悪さと吐き気に顔色を悪くする私の事を優しく支えてくれる帯刀君にお礼を伝える。

 

「切さん、遠出とか難しい体質よね」

 

「ゔっ、血筋的なものですから」

 

そう言って私は口許押さえる。

 

糸色家の人間は乗り物に酔いやすい体質の人間が多く、車は平気でも飛行機はダメだったり、飛行機は無理でも船は大丈夫という人もいる。

 

私は車も飛行機も船も全部ダメな体質だけど。

 

滅さんは普通に乗り物に乗れるし、運転も出来る上、蛮竜も使えるというハイスペックだ。

 

「まあ、そういうところも可愛いのだ」

 

「ギャップってヤツね」

 

「そういえば九能先輩に聞きたかったんだけどよ。糸色って何なんだ?」

 

「「この子だけど」」

 

スッとあかねさんと帯刀君が私を指差す。

 

「ん゛ッ……多分、家柄の事を聞きたいんだよね」

 

「おう」

 

酔い止め薬を飲んで、ゆっくりと吐息を吐く。

 

深呼吸と違って、横隔膜を刺激して特殊な呼吸を行うことで少しずつ意識を整える。あまり不得意な事をしたくないんだけど。

 

「糸色家は元禄時代に生まれた上級武家の家でね。元々は信濃国を治める武田家に仕えていたんだけど。糸色家の二代目が、戦骨っていう東国最強の武人と子供を設けたんだって」

 

「センコツって、まさかあの織田信長に雇われて武田に単身喧嘩を売りに行った。あの戦骨?」

 

「今テレビで放送してる大河ドラマの『戦に骨を埋める ~戦に生きた鬼の子~』のアイツか!?」

 

「……ぅん、そう」

 

コクリと頷いて答える。

 

「そして、蛮竜を持っていた人だよ」

 

そう告げると、今度は三人が頭をもたげる。

 

「蛮竜って、家宝のアレよね?」

 

「うん。明治初期に糸色景様のところに帰ってきて以降、糸色家の人間、それも極めて強い霊能力を持つ人間だけが振るえる日本妖器物の最上大業物かな」

 

ここ百余年の内に当主は五人変わっている。

 

二十代目の糸色妙様と遠君を含めて五人。

 

本当に強い人以外は当主足り得ない。

 

「当主争いはすごいし、派閥は多いかな。前当主の妙様は革新派。いわゆる古さを残しつつ、新しいものを取り入れる方針の人だよ」

 

「へえ、そんな人もいるのか」

 

「ちなみに数年前の全人類の未曾有の危機と言われた妖人戦争の折、最前線に立って指示を送っていたのは彼女だよ。スポーティーな美女でね、写真もある」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「「「(なんで写真持ってるんだ?)」」」

 

不思議そうに私を見つめる三人に小首を傾げつつ、彼女の持っている刀は霊気を吸って具現化する「試しの刀」という霊具だと教えてあげる。

 

まあ、刀は好みじゃなかったらしいけど。

 

ちなみに、私のお父さんは刀派だよ。

 

 

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