「「呪泉郷のガイドの娘!?」」
「私、プラム。お客さん達に呪泉郷の重大な危機を伝えるために来た。ラーメンお代わり」
「ひいおばあちゃん、ラーメン一丁ね」
「よく食う娘御じゃのう」
厨房の方から聞こえる会話を聞きつつ、私の胸に頭を押し付けるように座るプラムちゃんの口許の汚れをティッシュで優しく拭き取ってあげる。
「しかし、婿殿と良牙、糸色殿の話を聞くにプラムを狙っておるのは、おそらく伝説の民、鳳凰山の住人に間違いない」
「鳳凰山の住人……あの化け物みてえな格好も最初からそういう作りだったってわけか」
「羽の生えた服とは難儀な」
「寝るときはうつ伏せか」
ムースと響君の会話にそういうことなのかな?と小首を傾げつつ、猫飯店の戸の向こう側に立つ三人の気配に意識を向けていると響君が立て屏風を壊した。
なぜ?
「こっちじゃい」
「盛大に外したある」「良牙、おめえ」
みんなの視線を受けてはずかしそうにする響君を無視し、私は白い羽を持つ女の人の事を見据える。少なくとも、あの二人より強いのは間違いない。
しかし、猫飯店の中で戦うなら気を付けないといけないことは幾つかある。ここのお婆ちゃんは私よりも強いから暴れてはいけない。
「呪泉郷の地図、渡して貰いましょうか」
「けっ。誰が渡すかよ」
「んだ。オラ達が男に戻るためにも呪泉郷の地図を渡すことは絶対に出来ないだ」
「貴様ら、よくも恥を…!」
響君のさっきのは自分で間違えたんじゃないかな?と思いながらもプラムちゃんを机と椅子の後ろに隠し、如意棍槍を突き出して構える。
「! まさか日本でその宝槍に出会えるとは予想外。伝説の宝槍、如意棍槍。西遊記に登場する秘宝を見る日が来ようとは思わなかったわ」
「さいゆうき?」
「知らん」
「孫悟空のアレじゃ」
「「おお!」」
緊張感の欠片も感じない三人に呆れながら白鳥のように綺麗なお姉さんを見据える。あの人の相手は私がやるとして、みんなは呪泉郷の地図を守ってくれるかな。
「やりなさい。コルマ、マサラ!」
「「はっ!」」
「上等だぜ!」
「ふん縛って聞き出してやる!」
「待たんかおのれら!?」
私と彼女を残して暴れ始める男達。
「来なさい、小娘」
「お店の中っていう狭いところで戦えるのかな。そんな綺麗な羽根が生えているのに」
「フフフ、お互い様でしょう。一見、槍を持つ貴女が有利に見えるけれど。この狭い場所では槍の薙ぎを失った状態、突きのみで勝てると?」
「勿論、私は勝つかな。糸色流に戦えない場所は存在しないからね」
そう言って私は箸置きの筒の底を破り、槍の柄を筒に差し込み、穂先を向ける。突きの瞬間、筒を通って穂先が揺さぶられ、軌道を変則に変える。
「なっ!?」
「糸色は信濃国だよ。貫流槍術も使える」
そう言ってお店の外に逃げた彼女を追う。