「くっ!」
鳥目ゆえに外に出てしまえば攻撃を避け難く私の放つ槍の薙ぎと突きを風切羽で感じる微弱な空気の変化に応じ、防御の姿勢を取る彼女を見据える。
攻めきれない。
こういうのは、ちょっと初めてかな。
妙様に稽古して貰った時は攻撃の枕(起こり)を人差し指だけで止められるし、強さも彼女より何百倍と上なのは事実だけど。
「……貴女、名前は?」
「キーマ。鳳凰の民、キーマよ」
「私は糸色切だよ」
近くに控える忍び達に視線を向けると携帯用超大型懐中電灯を一斉に起動し、猫飯店の目の前だけ昼間と変わらない明るさになる。
「これは」
「鳥目のキーマに不利な状況で戦えば、私に有利なのは当然だよね。だから、私も右目を閉じる。式尉、私の眼鏡を預かってて貰えるかな」
「お嬢様の想うままに」
「うん。ありがとう」
式尉の手にメガネケースを置き、カッと石突きを蹴って槍を回転させながら右目を閉じる。ぼやける視界、辛うじてキーマの姿が見える程度だ。
「覇極流、千峰塵!!」
「水鳥千斬翼っ!!」
キーマの背中に生えた白羽が空気の渦を切り裂き、千枚の風の刃が私に迫り来る。見えなくても空気の振動と熱の変化で攻撃の軌道は見える。
千峰塵の突きが鎌鼬を貫き、風の刃を相殺する。
「ひとつ残らず、風を斬るとはやるわね」
「そっちも凄いかな。風を操るなんてさ……けど、流石に透明なブーメランは見えなかったよ」
ポタリ、ポタリ、と私の右肩に突き刺さった透明な結晶で出来たV字型のブーメランを引き抜いて、ゆっくりと手にとって確かめる。
やっぱり、この結晶の削り方は間違いない。
「キーマ、貴女って
「ブーメランを見ただけで気付くなんて、中々に博識のようだけれど。この明るさを利用し、貴女の首を断ち落としてあげるわ!!愾塵流、恟透翼!!」
ギュンと風を切る音が僅かに聴こえる。
「………………そこっ!」
ギュルギュルと音が迫り来る場所に槍の穂先を突き立て、棒高跳びのように身体を跳ね上げ、私の頭上に移動していたキーマの胴体を挟むように足を絡め、羽を押さえつけ、頭と腕を掴み、身体の位置を入れ換える。
上下逆さまのまま背中合わせになりながら、キーマの首を締め付け、両足を肩担ぎ、身体を捻って回転を加えて地面に急速落下していく────。
「空忍法・
「待て!?流石にこれは死ぬ゛ッ!?!!?」
ドゴォ……!!
キーマの頭は空き地の土の中にめり込み、倒立したまま動かなくなる。あっ、ちょっとだけ足がピクピクって動いているかな。
「
「殺さないよ。落とす瞬間、拘束を緩めて頭の両側に足を添えて衝撃を逃がしたからね」
【飛雲雀落とし】
忍風館空忍科の奥義。
飛雲雀にて相手と上下逆さまに背中合わせになり、首と腕を抑えるように首4の字固めに固定し、相手の両足を肩担ぎに押さえ込み、身動きを封じ、地面に向かって叩きつける。螺旋状に身体を捻って、さらに技の破壊力を高めることも可能である。